呪詛師と呪術師の狭間

□06.姉妹校
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姉妹校試合が始まる

氷月は森の中、木の上で2校の行動を見ていた

東京校では夏油が引率をしており、珍しく遅刻してない五条が目に入り

京都校の引率である歌姫が五条を見つけると、あからさまに嫌な顔をした

互いの学長同士が話し合い1日目のルール確認をし終えると、それぞれの待機室へ移動していった

氷月はブーツをコツコツと鳴らしながら庭園の置き石を踏みしめる

池の中の鯉に餌を上げたり、森を眺めたり、色々な事をしては時間を潰し

管制室へ行く暗がりの廊下で急な着信が入ってポケットから電話を取り出した

そこには「我儘白髪」とディスプレイに表示されており、苦笑を漏らしながらその電話に出た

『【なに?】』

五条「【歌姫、見てない?】」

それを聞いてまだ管制室に来てない事が伺えるだろう

庭園からこの暗がりの廊下へ来る時に感じた気配がまだしており、氷月はニヤリと悪い笑みを浮かべて携帯の通話をスピーカーモードにした

『僕は見てないよ』

五条「【てか何処にいるの?】」

『僕?僕はね...』

急な背後の殺気に氷月は背後へ回し蹴りをする

?「!?」

相手は小型ナイフの呪具を使って氷月を背後から刺そうと思っていたのだった

ナイフの腹に氷月の綺麗な回し蹴りのかかとが入り、呪具は砕け散り、その人物は大きく飛び退いた

『今、京都から来た女性と遊んでる』

五条「【は?】」

?「...素直に名前を言えばいいじゃないですか」

『それだとつまんないじゃん。悟、後で行くよ』

五条「【え、ちょ...】」

何かを申し立てたかった五条の通話を容赦なく切り、相手をしていた方へと身体も視線も顔も向ける

『学長さんのご指示?それとも、上司連中の命令かな?』

目の前にいるのが女性だと言うのも関わらずに、いつも呑気な氷月の表情から鋭い視線が放たれる

それに息を飲み込んだ庵はゴクリと唾を飲み下し、額からタラリと一筋の冷や汗を流した

庵「あなたはどっちの味方なの?呪術師側?それとも去年の12月に起こった、呪霊側?」

『うーん、まあ、はっきり言うなら僕は「どちらでもない」よ』

庵「ッ」

呑気な声は案外はっきりと答え、庵は懐からもう1本のナイフ形の呪具を取り出す

その眼は酷く警戒しており、また返答を間違えたらすぐにでも殺しにかかる勢いである

『僕の目的はただ1つ』

目の前に人差し指が出される

『探している人がいるんだ。その人を見つける事。それが達成されれば後はどうなったて構わない』

庵「その人は誰?」

『それは教えられないな。プライベートなもんで』

ケラケラと笑う目の前の人に庵は警戒を解かない

一瞬の隙に解いてしまった場合、自身がどうなるか分かったもんじゃないから

深く深呼吸をし、瞬きをした時

氷月は目の前に移動しており、庵の手の中にあったナイフを持つ手首に手刀打ちでナイフを落とし、庵が状況を認識するよりも早く背後へを回った

左手を身体の前に持って行きそのまま右腕を捕まえ身動きを封じ、左手でその口を押えて声を封じる

一瞬のうちに抱き込められたような形で拘束された後、庵はハッとするも全てが遅かった

そして最後に背後から殺気が溢れ出す

暴れていた庵の身体はピクリとも動かなくなるのを確認すると、氷月は耳元に口を持って行き

『あまり派手な事はしてくれるな。宿儺の器は簡単には倒せないよ。僕の「弟子」達が丹精込めて育てたからね』

カタカタを震え出し、まともな呼吸を忘れた庵に氷月は容赦なく言い放つ

『そうだ最後に。僕は敵でも味方でもないと言ったけど、少しだけ訂正。僕は「裏切り者」さ』

殺気をしまい込み、身体を離す

その場でヘナヘナと座り込む庵は自身を強く抱きしめ過呼吸のように息を荒げており、氷月はその様子を見下していた

『僕の気に入った相手をおちょくるのもいい加減にしないとね。上層部も』

楽しそうに喉の奥でクツクツと笑いながら氷月はその場を去っていく

笑いながらブーツの音を主張するように

庵は今目の前にいた人物が本当に「ただの人間」であり「普通の術師」なのか分からずにいた

身体から放たれた純粋でありながら真っ黒な殺気、一度肌に触れたら忘れる事が困難な程来い殺気であった

ブーツの音が消え去り、気配も消え去り、振り向いて確認するも誰もいない事に安堵のため息を吐き出した

庵「あれは、本当に...味方?」

ガクガクと震える身体に鞭を打ち、壁伝いに立ちあがるも

生まれたての小鹿のように笑う膝と整わない呼吸に苛まれながら、廊下の先へ、管制室へ向かう

あれは普通の人間じゃない

あの男は「殺気の塊」であり、そのものであり

「味方」にしてはいけない存在だと知った
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