自分が平和ならいいんじゃない?
□02.2度目の人生
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昼下がりの午後
ビルの間を潜り抜けるかのように、路地裏にひっそりと建っている喫茶店がある
そこで働く1人の男性は今日もやって来る客をカウンターで相手をしながら、マスターから指示されたコーヒーを淹れていた
「慣れてるねー、白川君」
『まあ、実家でやってましたので』
固定客のように毎日決まった時間に現れる男性はカウンターから手際よく作業をする白川と呼ばれた若い男性定員の手元を見ていた
長く細く後頭部で三つ編みにされた水色の髪を腰まで伸ばし、顔は程よくイケメンで店内にも関わらずグレーのサングラスをしており
白いカッターシャツと黒いズボンに焦げ茶色のソムリエエプロンを付け、右の腰にはチャラチャラと多くの鍵をぶら下げていた
『はいどうぞ。当店自慢のブレンドコーヒーです。サンドウィッチは今から取り掛かりますので少々お時間をください』
「うん。分かってるから大丈夫だよ。いつも通り美味しいのを頼むよ」
ニコニコと満足げにカウンター越しに貰ったコーヒーに口をつけ「うん。やっぱり最高」と一言零して奥の厨房へ入った
奥の厨房ではナポリタンを作りながらサンドウィッチ用のパンを切っていたマスターと会い、仕上げを盛りつけるだけ
マスターからほぼ完成したサンドウィッチを片手に厨房から出てすぐに手渡すと「早いね」と言われ男性店員は笑顔で答えた
夕方頃になると学校終わりの学生や定時退社した社員が目の前を通り過ぎ、日が落ちる頃には部活動帰りの学生と疲れた表情で会社員が通り過ぎるのを見つめていた
「もうそろそろ閉めようか、氷月君」
『分かりました』
初老の男性、この店のマスターが「白川氷月」に告げる
午後7時半となり、テーブルや椅子を丁寧に拭き、掃除機で床のゴミを吸い取る、モップを掛け、窓を拭き終わると
厨房の中を清掃していたマスターが店の出入り口に立てかけてある札を「close」に変えた
「今日もお疲れ様」
『マスターもお疲れ様です』
此処の喫茶店では若い男性が住み込みで、マスターが近くの家で暮らしている
マスターは夫婦でこの喫茶店を建てはいいものの、長年のパートナーを数年前に亡くし「喫茶店をどうしようか」と考えていたところに若い男性が「働いても良いですか?」と突然現れた
最初は店の清掃、皿やカップの洗い物、店の食材の調達を頼み、テキパキと動ける事から少しずつ出来る幅を増やし、今ではかなりの者となった
「じゃあ戸締りは頼んだよ」
『はい』
マスターを大通りまで送って行き、喫茶店へ戻る途中
『......誰かに見られてるな』
ボソッと男性が一言漏らす、背後から感じた視線を「前」を見ながら観察していると、昔働いていた場所で見た事ある人が通りかかっていたのだった
『あ。フードしてない』
パーカーのフードを深く被り、目立つ髪色を抑えるも手遅れな事に変わりはない
それでも氷月は店内に速足で戻った
店の明かりを消し、カウンターの端っこにある2階へと続く階段を上り、2部屋ある手前の扉に入る
扉には腰に付けていた鍵の束を持ち上げ、その中の金色に輝く1本の鍵を穴に差し込むむと扉の外枠が淡く黄色く光り、氷月はそこへ躊躇なく扉を開けて入り込んだ
喫茶店の2階の部屋には森林の中にあるロッジに繋がっていた
?「おかえり、主殿」
『うん。ただいま』
店内で見せる「営業スマイル」とは違う、自宅へ帰ってきた彼は「本当の笑顔」を晒しだす
家で待っていたのは白く長い髪を伸ばした男性「特級呪霊・白梟」の「ホーホー」
少しだけ厳つい顔をしており無表情が恐ろしいが、それでなくとも彼は全体的に優しく世話好きで家事全般を任せている
『みんなは?』
ホーホー「彼女たちは夜の散策へ出かけています。もうそろそろ帰る頃かと」
『了解。結界には、変わりないね』
ホーホー「ええ。何も問題はありません」
家主である氷月は風呂を済ませると4人の110cmの女の子6人が仲良く帰ってきた
『おかえり。赤さん、青さん、緑さん、黒さん』
赤「ただいまー!パパーッ!」
赤い髪の少女はそのまま氷月に抱き着くとそのまま頭をグリグリと押し付けて来る
青「ただいま」
静かに近寄ってはしっかりと挨拶をする青髪の少女
緑「あ!パパー!」
ほんわかふんわりの雰囲気を醸し出す緑髪の少女
黒「た、ただいま...」
少しおどおどしており怖がりな黒髪の少女
彼女達は白川の「実の娘」ではなく「特級呪霊・鴉」と「1級呪霊・三つ子の島柄長」
名前から簡単に察する事が出来る
『さあ皆、お風呂に入ってサッパリしてからご飯を食べよう』
赤「はーい!」
青「はい」
緑「はーい」
黒「...はい」