幸せは訪れない

□3.果たすべき使命
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燭台切「どうやら審神者君が食べていないみたいなんだ」

昼食が終わり、午後をのんびりと満喫しようと縁側に座り込んでいた鶴丸の元

後ろから温かな茶と茶菓子の団子を持った燭台切の発言に、鶴丸は顔を顰めた

あれから2ヶ月、計3ヶ月の時が流れた

審神者である夜見は約束通りに審神者部屋へは刀剣男士を連れ込まず

また刀剣男士との会話もない

鶴丸の出した条件にしっかりと従っていた

食膳を任されている燭台切は何時も三日月が1食分しか持って行かない事に疑問を抱き質問した

その問いの答えは想像以上の事であり、此処の隊長である鶴丸へと相談しに来た

鶴丸「今日は、とかじゃないのか?」

燭台切「そうみたい。嫌いな物とかあったのかな?」

此方の条件を飲んでくれる審神者は居ても居なくても同じ存在

だが本丸の円滑な運営には必要不可欠は存在ではある

そのため、もうそろそろ人間に対しての栄養を考えるべきではないかと思い相談したのだが

それ以前に食事を取っていない事に驚いた

今日も平和な本丸、これが要約当たり前となっていた時に

1つの問題点が浮上した

鶴丸「よし、此処は聞いてみよう。あの審神者もどうやら最近はゆっくりとしているらしいからな」

前任の残した書類(1年分)は夜見の働き(3ヶ月)によって全て片づけられた

今は部屋で三日月をかなり甘やかしているようで、あの審神者部屋へは午前9時から午後3時まで滞在し

残りは就寝部屋へと戻っては精一杯に三日月を甘やかしていると聞いた

鍛刀してから碌な会話もなく、一緒に過ごす時間も少なく

それでも我儘を言わなかった三日月へと1つの我儘を許した

三日月の我儘は1つ「主の独占」だった

夜見はそれに2つ返事で返し、今月6月の一月は三日月に丸々時間を与え

残りは審神者らしく仕事をするようにしたのだ

来月7月になればどうなっているのか分からないのが鶴丸の疑問ではあるが

今はそれでもどうでもいい

燭台切「あの審神者君は働きすぎだからね。栄養バランスを考えた食事をしっかりと食べて、僕たちのためにしっかりして貰わないとね」

鶴丸の返事を聞かず、何処か楽し気に厨へと向かう燭台切を見送り茶菓子を頬張った



こんのすけへ事前と就寝部屋へと向かってもよいかと鶴丸が訪ねると「夜なら大丈夫そうです」と返事が返ってきた

夕食を済ませ、湯あみを済ませる

今日の報告書を片手に縁側を歩いて目的の部屋へと辿り着いた

鶴丸「鶴丸国永だ。失礼するぜ」

『ああ、構わない』

外と内を仕切る襖を開け、世闇に押されるようにして中へと入る

布団の上で胡坐を掻く三日月の上に、今回の目的人物が無表情で抱きしめられていた

『すまない三日月宗近。来客だ』

三日月「...仕方がない。主の指示であればな」

三日月は残念そうに座り直し、夜見はその上から移動し

既に置かれてあるちゃぶ台の前へと座った

『どうぞ』

無表情、冷淡な声で鶴丸に告げた

鶴丸はその声に従い、夜見の前に座って今日の報告書を提出した

受け取った夜見はザッと目を通し

『今日も必要事項に全てが的確に記入されています。毎日ありがとうございます』

とお辞儀をした

鶴丸「で、今日の話なんだが」

頭を上げた時点で鶴丸は話しを始めた

人間である夜見がどうして食事を取らないのか

好き嫌いがあるのであれば教えて欲しい事を訪ねたが

『僕に食事は不必要です』

帰ってきた答えに鶴丸の口は閉ざされた

『此処に居る三日月宗近にも、鶴丸国永を含む刀剣男士にも言っていなかったが、僕は人間であって人間でない』

自分の耳が始めて幻聴を拾ったと思った

鶴丸は斜め後ろに座っている三日月へと顔を向ける

三日月は苦しい表情と共に顔を背け、唇を噛んだ

『僕は一言で言えば化け物の部類に存在する。食事を必要としない身体、感情を生み出さない心、異常な身体能力。政府は僕を「化け物」と言った』

人間とは言えなかった、妖の類とも違い、こんのすけや遡行軍のような式神でもない

ましてや刀剣男士のような付喪神でもない

夜見は政府に言われた事をそのまま鶴丸へと告げた

『現世と呼ばれる場所でも僕は食事をした事はない。現世の人間に必要とされたのは何もなかった』

字の読み書きはまだ自分が化け物だと知れ渡る前に優しいお爺さんとお婆さんに教えられた

言葉をしっかしとスラスラ言えるのは他の子供達の会話を聞き自分でブツブツと言っていたから

言葉の意味を理解しているのでは、孤児院にある辞書を読書代わりに使っていたから

学校にも行かせて貰えず、子供らしく遊ぶ事も感情を表に出す事も

夜見は人間と共に生活をしていて、教えて貰わなかった
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