毎日楽しく団子を食べよう
□5.事件発生
2ページ/3ページ
太宰sid
氷月君の力を駆使しても何も分からずに3日目
『あぁー...、なんか、映像、見つかった...』
「「何っ!?」」
会議室に入ってすぐにスクリーンが下りてくる
その間に氷月君は隈も顔色も最悪の状態でパソコンを操作していた
『これが2日前、午後6時に映った監視カメラの情報だ』
人通りの少ない大きい公園
土産物は5時半に閉店のため既にシャッターで出入り口は閉まっており
外の様子が見えた
『盗まれた異能力が報告されたのが昨日の午前10時半。警察に直接言いに行ったらしい』
監視カメラの映像は少し粗くて見にくい
スーツを来た男性が何か異能力を使っているであろう
その場から動かず、じっと前を見ている
カメラから見ると左の方を見ている
『身長は大体170センチ前後、細身に見えて筋肉質。身体能力は...』
氷月君が説明している最中
急に画面の左側から1人の男性が飛び出してきては、相手のみぞおちに一発の拳を入れた
『この通り、すごく早いし、もしかしたら格闘家の可能性が高い』
谷崎「うわぁ...」
『んで、極めつけは、これな』
みぞおちを決めた男性の足元から黒い霧が出ると、自分と相手を飲み込んだ
『おそらくだけど、これが相手の異能力。この黒い霧の中で何が起こっているのかは勿論の事分からない』
画面右下には撮影された時間が秒単位で刻まれている
そのため、黒い霧が発生してから僅か30秒
その霧は晴れ、その場には誰もいなかった
『相手の異能力は、自分以外の相手から異能力を奪う、あるいは盗むの2択。この映像を見ている限り、相手を戦闘不能状態にしてから異能力を攫っているようだ』
与謝野「攫うって、人じゃないんだから」
中島「そう言えば!さっきの人はどうなったんですか!?」
映像では黒い霧が消えた後、そこには誰もいなかった
『公園のベンチで眠っていたらしい。当時の記憶はなく、仕事の疲れで眠ってしまったと思い込んでいるらしい。今日今さっき、今の事を思い出したそうだ』
恐怖による精神防衛が働いたか
あの中では想像もつかないような恐怖を味わったと思ったほうがよさそうだ
『と、分かったのはこれだけ。顔は監視カメラの映像でも分からなかったし、被害にあった男性から聞いても覚えていないそうだ。周辺の監視カメラを洗ってもその男性が映っている映像はなかった』
「もう限界、寝る。おやす...」と言って机に額をぶつけて眠りだした
国木田「さすがにこれ以上は無理をさせられない、か」
国木田君の言う通り
彼は探偵社に3日間籠り不眠不休で記録やら映像やらを探しまくっていた
太宰「お疲れ様」
限界を迎えた彼にどんな事をしても起きない
与謝野「全く。無茶しすぎなんだよ。太宰、定時で上がるまでは面倒見るから、すぐさま医務室に運びな」
太宰「りょーかい」
机に突っ伏している彼の頭を数回撫で
軽い体を抱きかかえる
江戸川「太宰」
会議室から皆が出た後、珍しく乱歩さんが残っている
江戸川「分かっているのかい?彼は世界を壊す1人であり、兵器でもある。彼には痛覚が存在しない。そのため、感情や記憶をコントロールされてしまえば世界は破滅の一択」
乱歩さんの言う事は分かっている
江戸川「白川君の監視は世界の平和へと繋がる。キミがそれを怠れば世界は一気に破滅色に染まる」
太宰「それでも。それでも私は、彼を1人の男性として見たいのです。彼の異能力はまだ計り知れないものがある」
江戸川「では太宰。今の彼の価値を教えてくれ」
太宰「今の彼の価値は情報収集。それ以外では、もしもの時の強力な戦力となるでしょう」
江戸川「ふむ、今はそれでいいか。もしもの事があれば、命の保証はない。分かっているね?」
太宰「勿論です」
江戸川「キミがそこまで言うのであればいい。任せたよ」
ようやく席を立った乱歩さんは私の前に現れ、彼の頭を数回撫でる
その優しい手つきは先ほどの言葉を発していた者の手つきとは思えない
江戸川「彼は僕たちよりも若い。それでいて精神は脆すぎる。それは一般の人よりも脆く儚く、消えるときは一瞬だろう」
太宰「彼が兵器となるのは、ヤツらの手に「完全」に落ちた時」
3日間食事を抜いただけでここまで体重が減るなんて思ってもいなかった
だが、それ以前に
乱歩さんが彼について独自に調べている事に驚きだ
そして
江戸川「太宰。彼は僕たちを裏切るね。一時的にでも、裏切るんだね」
太宰「ええ。白川君は「許さないでほしい」と願っていました。私はきっと「許さない」でしょう」
他の誰が許しても、私だけは彼を許さない
それが例え、彼の死に関わっても
私は己を素直に、彼を許さないだろう