毎日楽しく団子を食べよう
□7.忘れない2日間
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死んでからしか発動しない異能力
「ない」とは完全に思っていなかったものの
いざ目の当たりにしてしまうと信じられない
黒河「俺が誰かに殺された時、その殺した相手の体に自分の魂を移動させ滞在するようだ」
太宰「待った。それだと、君を殺したは実の兄である白川君になる」
黒河「そう。俺は、兄さんの異能力で死んだ」
彼が、実の弟を、殺した...?
それは、あり得ないといいたいけど
いつ?
あの時、私が拾った双子は生きていた
片方はぐったりとしており、またあの時の黒河は
太宰「その後?もしかして...」
黒河「気づいてもらえたのであればそれでいいよ。君の思考は分からないけど、結論はそれで合っていると思うよ」
もしも、もしも私の考えが正しければ
あの建物を倒壊させたのは氷月君だろう
そして、その氷月君の近くに居た黒河は彼の異能で被害にあった
即死ではなかったものの、私が保護した後に死んだのだろう
太宰「キミたちの髪色は?」
あの時は黒髪だった
どちらも同じような長さ
違うとすれば瞳の色だけ
氷月君は青色だった
静かで落ち着いた色の青色で
黒河は赤色だった
彼の場合は飢えているような色が想像出来る
一緒に眠った日を思い出す
黒河「俺たちは元々水色なんだ。それを孤児院の頃は他の子どもたちに「普通じゃない髪色」って事で遠ざけられたりしたから黒にしただけさ。氷月も最初は嫌がっていたよ」
彼の髪は今は黒い
そして、後頭部で纏めているだけで三つ編みでもない
氷月君は何かを読み込んでいる時の長い時間が暇で
自分の長い髪で遊んでは、本当に自分で編んだのかと聞きたいほどに綺麗な三つ編みが出来ていた
黒河「太宰。君は俺の願い事を知っている。そして、その願いを叶える事が世界の平和へと繋がる。俺は家族として心苦しい選択ではあるけど、氷月自身がそう望むのであれば俺は何も出来ない」
太宰「だからこそ。君を今ここで殺し、その身も活動を止めろというのかい?」
黒河「ああ、そうだよ」
氷月君の時には見られなかった綺麗な笑顔
声も、体も、変わらない
黒河「俺のもう1つの異能力。氷月の異能力を、もうお前は知っているだろ?」
太宰「ああ」
黒河「俺がこの身から消えれば氷月はただの化け物と化す。それを止めるためには君の異能力である「人間失格」を行うか、殺すかの2択しかない」
「だから、コイツは自分の異能力を盗んでほしいと願ったんだよ」儚げに微笑む黒河は
本当に兄の事を思って心苦しい選択をしている
私だって心苦しいよりも、胸が張り裂けそうな程の痛みのある選択だ
私たちが生きたいと願うのであれば、この双子を殺さなければならない
しかし、私の願いであり我儘を叶えるのであれば、世界は滅亡の一択になる
それほどまで彼の異能力は強力で、凶悪
彼の暴走は中也の汚濁をも簡単に超す事が出来る
黒河「頼む太宰。俺たちを、殺してくれ。殺さないためにポートマフィアから出たのに、こんな事を頼むのは間違っていると分かっている。けど、これは、黒河永久からの依頼だと思ってはくれないか?」
私の頬に伸ばされた手が震えている
死ぬのは怖い
さらに黒河の場合は2度目の死だ
例え、双子一緒に死んでも
死ぬときの痛みや苦しみは壮絶な感覚だろう
太宰「嫌だね。私は私で君を救う。好きな人を簡単に手放せるほど私は自分に忠実なんだ」
黒河「太宰...」
太宰「私は、氷月君の事が好きだ。それは何物にも代えられない程にまで嵌ってしまった。だから、その依頼は断らせてもらうよ」
離れた温もり、涙が零れる頬に、綺麗な赤の瞳が揺れている
黒河「氷月は幸せ者だな。双子の俺は氷月を殺す事しか考えなかった。けど、君になら、任せられる。例え暴走しても止めてしまうのだろう。けど、暴走してしまった反動は肉体的にも精神的にも大きい。それでも、いいのかい?」
太宰「いいよ。だって、私だって彼の暴走は一度目にしている。どんな状態になっても、私は氷月君を手放さないよ」
黒河「...ありがとう。ありがとう、太宰」
その場に崩れ落ちた彼は声を殺し泣き始めた
黒河「俺たち双子は忌み嫌われていた。兄さんの異能力が異質で、異能力を持たない子供たちから何度も虐めを受けて」
ああ、そうか
だからなんだ
氷月君が、あんな心を握りつぶしたような
表情を変えなかったのは、虐めを受けて他人と接触する事に抵抗を感じたからなんだ
他人と接触すると弟が危険な目にあう、相手の顔色を事細かく伺って表情は一定に保っていたんだ
黒河「守れない場面の方が多かった。氷月は自分でも知らないうちに異能力を使って、あんな風になってしまったんだ」
彼の異能力「方向転換」
ありとあらゆるベクトルを操ることが出来る
触れないといけないが、それよりも
異能力を使った代償に「自らの感情」が消えていく