いならなかったモノ

□01.未知数が未知と希望を呼ぶ
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少年の後についていく五条

その少年は気にも留めずに前へ進む

五条「自己紹介がまだだったね」

少年のフード付き学ランは10年前、五条の好きな「少女」白川氷月の着ていた物だ

どこにでもある物じゃない

そのため五条は余計に詮索したかった

五条「僕は五条悟。専門学校の先生だよ」

『僕は氷月です』

五条「!」

軽い自己紹介のはずだった

急に足を止めた五条に「氷月」と名乗った少年は足を止めて振り返った

『どうかしましたか?』

無表情で虚無を見せる瞳

感情の乗ってない声音と言葉

彼は感情が誰から見ても明らかに感情が欠落していた

五条「いや。僕の知人と同じ名前をしていたからね。少し驚いただけさ」

「苗字は?」と聞いた五条に

『あ、すいません。いつも名前だけを聞かれていたので。僕は「夜回(よまわり)氷月」です』

五条「珍しい苗字だね」

時間が止まったような、元から時間が与えられなかったのか

表情はずっと止まっている

近づく五条に氷月はその行動を見て

五条は両手の人差し指で氷月の口角を無理矢理上げた

『何をするんですか?』

その声に色はナイ

五条「うーん。君、もうちょっと笑ったら?」

『僕は氷月です』

五条「氷月」

『はい』

会話が続かない

そんな事が分かっていた



氷月の後に付いて来た五条は小さなアパートの前にいた

五条「此処が氷月の家かい?」

『はい。現在住んでいる家です。上がっていきますか?』

五条「勿論」

入口から階段を上がり、一番奥の部屋へと行く

五条「お隣さんはいるのかい?」

『居ますけど、日中は殆どいません。何処かの会社員のようで早朝〜夜までは戻る事は少ないです』

五条「なるほど」

鍵を開け、中に入る

中には必要最低限の物しか置かれてない

台所には1人暮らし独特の寂しいさ

リビングには殆ど物は置かれておらず

部屋の真ん中には寂しいちゃぶ台が1つポツンとあった

寝室にはシングルベットにカラーボックスがあり、そのカラーボックスの中に着替え等が入っている

五条「ねえ氷月。聞きたい事が沢山あるんだけど、時間あるかな?」

『はい。今日は特に用事がないので大丈夫です』

五条はちゃぶ台の前に座ると、氷月が台所から出てきた

その手には御盆が握らており、その上には湯気の立つ湯呑が2つあった

菓子折は和菓子

氷月が五条の正面へ座ると、御盆の上の物をちゃぶ台に置いた

五条「さて氷月。僕から色々と質問があるが、答えたくない事があれば拒否してもいいよ」

『分かりました』

ようやくフードを取り、その長い髪を晒す

そしてフードの陰でよく見えなかった顔もだし、学ランを脱いでは丁寧に畳んで自分の隣へ置いた

中は薄手の長袖を着ていた

五条「うーん。そうだな、まずは」

視線を動かす五条に首を傾げながらお茶を啜る氷月

五条「そうだね。一番気になっている事を聞こうかな。その学ラン、何処で手に入れたの?」

五条の言葉に氷月は考え込む

そして

『僕と同じくらいの少女からお借りしました』

五条「!、名前は?」

『名前...、覚えていません。ただ、とてもお優しそうな少女で、あっ』

思い出そうとする氷月は何かに気づき、急に寝室へと向かった

戻ってきた時には1つの封筒が握られており

『その少女から白髪でツンツンした頭の人を見たら渡して、と言われました』

その封筒を五条に渡した

五条「今読んでもいいかな?」

『はい。構いません。僕はその間、夕ご飯を作ります』

リビングを後にし、台所で夕ご飯を作り始める氷月

その後ろ姿を見て、五条は渡された封筒を広げた

中からは1つの手紙と黒い髪留めのゴムが出て来た

五条「......」

ああ、これは本当に彼女からの手紙なんだ

宛名も何もない封筒を見ながら五条は恋人の事を思い

手紙を黙読し始めた
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