いならなかったモノ

□02.五条の助手
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暖かい日差しと共に目を覚ます

フカフカで温かい布団の中で目を覚ました氷月はモゾモゾする

『...ん』

重い瞼を開けると、知らない部屋の中

氷月はゆっくりと眠る前の記憶を思い出す

五条と共に訪れた町外れの大きな廃病院

何人もの行方不明者をだし、捜索に駆り出された警察までもが無残な姿で発見される

呪霊のせいではないかと思った五条が氷月を連れて訪れ

1級同士が戦うなり食べるなりして、特級にまで発展

身体をボロボロにしながらそれに勝利し、そこから

『...五条さんに、任せて』

そこで確か、眠った?

と考えて起き上がろうとすると、何かがそれを阻止した

ぼやけた視界がハッキリし始め、自分が起きるのを阻止するモノは何かと探す

氷月の小さい体には、白く筋肉質な腕がお腹に絡みついており

その腕の先には、見知った(?)人物がいた

『五条、さん?』

眠っている小さな氷月に大きな五条が背中から抱き着いているのだ

なさがら「抱き着き枕」のように

『うーん...』

氷月は身体をグルリと回し対面になり、再び小さくなっては五条の腕の中にスッポリと収まる

『五条さん、五条さん』

小さな声で優しく呼ぶと、五条が半目を開けた

宝石のように綺麗な水色の瞳が氷月の顔を捉えるも

半分しか覚醒しておらず、前日まで色々な事をやってはほぼ明け方に寝た五条はギュッと氷月を抱きしめ直し、再び眠り始める

スゥースゥーを寝息を立てながら眠るのを見て「邪魔してはいけない」と判断した氷月も

初めてで、何処か懐かしむように五条の胸元の服を右手で掴んで一緒に眠る



大分日が傾き、赤み出した空の元

ベットの中で再びモゾモゾと何かが動き出す

五条「ファ〜、しまった、もう夕方じゃないか...」

普通の声で話しながらベットの中で欠伸を、ベットの傍らにある台の上から携帯を見る

そこには無数の着信があったが、全て無視しており、なんならマナーモードにまでしてあった

メールをいくつか見ると五条の米神に皺が入り、大きなため息を吐き出した

携帯を操作し、メールを送って来た人物に「了解」の2文字と

いつもの人物に「来て」の2文字を送った

これからの事を考えると今からなんて面倒だと思いながら、携帯を台の上に戻し伸びをする

上体を起こそうとした時、何かがそれを止めた

五条「?」

見ると五条の胸元に氷月がひっついており、その右手で胸元の服を掴んでいた

五条「あーあ、なんでだろうね」

「彼女」ではないのに、どうしても可愛がってしまう

起き上がるのを断念し、ベットの中に戻っては布団を整える

自然と綻ぶ表情に気づかず、五条は優しくその手に自分の手を重ね

空いた手で綺麗な髪を見ながら頭を撫でた

『ん...』

ギュッと身体を小さくした氷月はそのまま瞼をゆっくり開ける

五条「あれ?起こしちゃった?」

『...あ、おはようございます。五条さん』

舌ったらずな口調で大きな欠伸をする氷月

左手で目をゴシゴシし、その右手はずっと五条の服を掴んだままだった

五条「おはよう氷月。でももう「おはよう」の時間は過ぎて、あと数時間で「おやすみ」の時間かな?」

『!、そんなに寝てたんですか』

薄いリアクションと共に上体を起こそうとするも、自分の右手に違和感を感じて見る

五条の服を掴む氷月の右手の上に、五条の大きな手が握られていた

『...もしかして僕のせいで起きれなかったですか?』

五条「いいや、僕もさっき起きた所さ」

五条の手が離れ、氷月も服を離すと

2人仲良くベットの上で座った

『そう言えば、此処は五条さんが暮らしているお部屋ですか?』

五条「まあね。ほら氷月も起きてちょっと出かけようか」

『はい。分かりました』

ベットから出た五条に続くと寝室から出てリビングに行く

そして、リビングをそのまま通り過ぎる前に氷月の手を掴んで五条とは反対側の扉の前に行くと扉を開けた

五条「はい。氷月の部屋ね」

広がっていたのは氷月には大きく、五条には小さいベットに数個のカラーボックス

中に入ってカラーボックスの中を確認すると、アパートで住んでいた頃の服装がしっかりと入っており

勉強のための机、クローゼット、カーペットまで敷いてあり、今の氷月には十分すぎる空間だった

『え?僕の部屋ですか?』

五条「うん、そうだよ。貴重な「呪術師」をアパートで1人暮らしなんてさせられないよ。君には実力と経験を積んでもっと強くなって欲しいんだ」

『...それは構いません。僕には「夢」も「目標」もなかったので、将来を作ってくださったのは有り難いのですが、僕には何をすればいいのかサッパリ分かりません』

五条「大丈夫。それについてはしっかりと教えるから。じゃ、着替えたらリビングね」

カラーボックスの中には、白川から借りた制服に付いている特殊なフードがついて紺色のパーカーがあった

それに腕を通し、紺色のズボンや紺色の靴下を履いては自室を出た

既に準備の出来ていた五条は軽食を大量に用意しており、席に着いてはそれを食べた

『美味しい...』

五条「それは良かった」

過去に彼女が好きだと言っていたサンドウィッチ

たっぷりのレタス、瑞々しいトマトを挟んだものと

茹でた卵を潰し、マヨネーズと混ぜたものの2つを用意し

6枚切の食パンに挟んだ

食べ終わると五条はポケットの中をゴソゴソとあさり、氷月に手渡す

『手袋?』

五条「そう。君の場合は手を大きく使って呪術を使うから、怪我をしないようにね」

『ありがとうございます』

紺色のフードを被り、フードの穴から髪を出す

ブーツを履き、手袋をし、五条の隣に立てば

「不審者親子」の完成だ
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