いならなかったモノ

□04.出会った事の話
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次の日には休養を兼ねて1日休み、さらに次の日に学校へ行けば

いつも通り読書をする彼女が既に座っていた

五条「おい」

『ん?何?』

五条「今日って確か「組手」の授業があったよな?」

『そうだよ』

ソイツの前に行って思い出す

一昨日の呪霊との戦闘

相手の行動をよく見て行動し、背後で守っている者をしっかりと見ていた

夜蛾から「手を出すな」と言われ五条はただ見ていただけ

普段から見られない多種多様な格闘術、幼い容姿から来る意外な姿

五条は目が離せず「意外な一面を知った」と思った

1分ほどで決着がついた呪霊は文字通りのボコボコにされており、返り血を1滴も浴びずに倒れた男へふれ

「反転術式」を使った

五条「お前、呪術使えないんじゃ...」

『うん。使えないよ』

救急車で運ばれていく男性を見送った氷月は五条の質問に難なく返し

夜蛾「白川は特殊な体質を持つ「呪術師」だ」

と途中で夜蛾が入って来る

五条「特殊体質?」

『うん』

夜蛾「「呪力があまり効かない」体質。自分の呪術もそうだし、相手からの呪力でもだ。例外は幾つかあるが、それは追々話す」

あの時の言葉を思い出すだけで「期待外れの転校生」から「面白そうな転校生」へと変わった

五条「今日の組手、俺とやれ」

『別に構わないけど、本気?』

本から視線を上げ、五条を見る目は「相手を小馬鹿にした」目

それに苛立ちを覚え「当たり前だ」と一言言って自分の席に座った



期待していた授業になり、五条はすぐに氷月の腕を引いて校舎から飛び出る勢いで出ていく

それを見た夏油と家入は疑問符を浮かべて、歩いて追い掛ける

家入「ねえ氷月。五条と何かあったの?」

『え?僕は分からないけど、なんか僕と「組手したい」って朝から』

念入りに柔軟体操をする氷月を見ながら家入は夏油と話している五条を見る

夏油「悟、何あったのか?」

五条「なんで?」

珍しく体操をする五条に遅れてやって来た夏油が話しかける

夏油「この前まで「期待外れだった」って言って興味なかったのに、今日は全くの逆じゃないか」

五条「俺が急に興味湧いちゃいけねーのか?」

夏油「まあ悟だからいっか」

時間になるのと同時に夜蛾が運動場へ到着する

真面目に体操する五条の姿を見て「彼女と組ませたのは正解だった」と思うが、それも後日崩されるのはまた別

夜蛾「じゃ組手を始めるぞ。まずは基礎からだが...」

五条「センセー、俺、コイツとやりたい」

『夜蛾先生。僕は嫌なんですけど』

夜蛾「ま、言っても聞かないだろ。氷月、悟の相手をしてやれ」

五条「やった」

『えー。まあ、夜蛾先生が、言うなら...』

呪術師は呪術を使って戦うだけが全てじゃない

中には呪術の使えない呪術師が存在しており、呪力は豊富であるからこそ

近接戦闘を鍛え、呪術が使えないデメリットを補う事がある

その典型的な例が「白川氷月」であった

彼女は生まれた時から豊富な呪力こそあったが、呪術が上手く使えず、術式も使えない場面が多い

だからこそ近接戦闘を習い、1級程度でも難なく1分以内に祓う事が可能である

五条は楽しそうに運動場の真ん中へ行くと、その後ろを氷月が着いてく

数メートル開けて対面すると夜蛾の言葉が飛ぶ

夜蛾「氷月。1分遊ばせた後に、即刻ヤレ」

五条「1分遊ばせる?」

『1分だけでいいんですか?僕は5分でも構いませんが』

夜蛾「1分でいい」

『リョーカイ』

額に少しの青筋を入れる五条は誰が見ても怒りが爆発する寸前にしか見えず、また氷月は分かっていながらも五条を挑発する

『じゃあ五条。僕は夜蛾先生の言う通り「1分は手を出さない」から』

五条「は?ふざけんじゃねーぞ?」

『ふざけてないよ?ただし、君が僕に1発でも入れる事が出来たら、考え直してあげるよ』

ニヤリと笑う氷月はあの時、呪霊に見せた「余裕の笑み」と似ており

これは明らかに五条に対する「強者の笑み」であった

夜蛾「では、始め!」

開始と共に五条は氷月に急接近し、掌底打ちをするも

片目を瞑った氷月にヒラリと避けられる

五条「!」

五条は術師としてかなり有名であるからこそ、幼少期から呪詛師に狙われていた

自分の身を守るため、術式がまだ使えない頃には嫌と言う程、幼過ぎる身体に格闘術を覚えさせられた

弱音を言っても叩きのめされ、逃げ出そうとしても叩きのめされ、根性だけひん曲がってしまったが

それでも格闘術は一流と言っても過言ではない

だがそんな攻撃を片目で何度も避け続ける氷月

『うん。やっぱこっちでいいや』

両方の瞼を閉じた氷月を見て、完全にキレた五条

先程よりもスピードと呪力を上げて殴るや蹴るをするも、全てが避けられる

『そんなんじゃ、当たらないよ』

夜蛾「1分」

『じゃ、こっちの番だね』

五条「ガ、ッ!」

何が起こったのか五条、夏油、家入は理解出来なかった

夜蛾の言葉と同時に、五条の身体は宙を浮いており、地面に背中から倒れたと思ったら動かなかったからだ

『あれ?やちゃった?』

いつものキョトンとした表情に戻ると頭上にしゃがみ込んで手を振る

五条は動きたいのに動けないでいた

顎先に入った一発に脳が揺れていたからだ
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