動物達は僕の味方

□05.狐面の術師
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北海道の空港に到着し、そこからさらに補助監督の借りたレンターで1時間程度移動し、先にホテルへ荷物を置きに行く

補助監督はそのまま現地のスタッフに電話を掛け、2人はその最中にホテルにチェックインしていた

五条「酷い顔だね」

『......』

ホテルに荷物を置き、すぐさま五条は入口に立っている氷月の仮面を勝手に外し表情を見る

苦しそうな表情だ、彼が此処まで感情を表情に乗っけるには本当に初めて

それほどまでにこの地が「嫌い」であるかが分かる

五条「これから呪霊を祓うけど、そんなんで大丈夫?」

『問題ないよ』

取られた面をひったくる勢いで奪い返し、氷月はその表情を隠す

五条「フロントの人、もしかして知り合い?」

『...言うな』

どうやら氷月の黒歴史はこの地にあり、また黒歴史の人物もそれなりにいるようで

各地にあっては「視たくない」ように顔を背ける

補助監督から五条の携帯へ電話が掛かり、今すぐ出る事が決まった

ホテルを出て、フロントに鍵を預け、補助監督に車を出してもらう

伊地知「五条さん。お連れの方は大丈夫ですか?」

今日は途中から補助監督を伊地知に指名した

五条「大丈夫さ。こう見えても彼はしっかりと仕事をするよ」

現場は住宅街「最近音沙汰もない不気味な民家がある」と警察へ通報が掛かり、2名の警察官が入った所、帰って来ない

立て続けに入るも「これは自分達の手に余る」と言う事で「呪術界」に正式な依頼を出し、補助監督や「窓」等の関係者が立ち入った所

「生得領域」が民家に形成されていた

時期や頃合いを見て五条は即座に「氷月の弟君を殺した呪霊」のレベルが上がったとしか言えなかった

伊地知運転の元、近くにあったパーキングエリアに車を止め歩き出す

家から刺さる視線、害悪が来たと言う視線に五条も伊地知も氷月も慣れているが

氷月はストレスを上手に扱えないため、溜まる一方だ

伊地知「此処が現場です」

道路と敷地を隔てる塀に表札が飾られている

そこには「吉田」と書かれていた

伊地知「「帳」を下します」

昼の明るさだった周りが夜になっていく、それと共に氷月が何処か遠くへ行く気がした

五条「じゃ、行ってくる」

伊地知「ご心配と思いますが、お気をつけて」

『......』

先に扉に入って行く氷月の後に続き五条も共に中に入る

『ッ!』

今まで見ていた「生得領域」よりも綺麗だった

雪が積もった綺麗な街路樹で絶え間なく細かい雪が降っている

『...多分、こっち』

街路樹を迷う事無く進む氷月に五条はすかさず手を掴む

五条「氷月。こっちを見て」

本当に何処かへ消えそうな氷月を1人にしておけない

五条「見ろ、氷月」

振り返らず、そしてまた五条を見る事もしない

強い口調で言っても聞かない、もう呑まれている

「過去」に「嫌悪」に「死」に呑まれている

街路樹の塀に勢いよく叩きつけるようにして背中を打ち付け、五条は逃がさないように壁との間に氷月を入れる

面を外し、氷月の瞳に自分のサングラスをしまってしっかりと見る

五条「俺を見ろ。氷月」

塀に打ち付けたからこそか、それとも五条に命令されたからか

焦点の合っていなかった目が五条の目を見て呼吸を荒くする

五条「俺の声を聴け、俺を見ろ」

呪いのような言葉に氷月は従うしかない

自分の精神が元より可笑しいのは理解しているし、何よりも今が異常すぎるのを知った

『ご、じょ...』

胸を肩を大きく上下させ、途切れ途切れに言葉を詰まらせながら話す

「やっぱり、連れてきてはいけなかったんだ」と胸の奥がギュッとに強く握られる感覚になる

『ぼ、く、は...』

虚ろな目をして、呼吸の合間に継ぎ足される言葉はとても苦しそうで

本当に氷月は出会った時から「孤独」であった事を深く理解させられた

「誰に頼らない」んじゃない、「誰にも頼れない」現実を今まで生きてたんだ

五条「氷月。戻って来るんだ」

何分そうしていたか分からない

呼吸が落ち着くと氷月から五条の肩に手を置く

『もう、大丈夫...』

その肩を力なく押すも五条は動かない

「壊したくない」「壊れて欲しくない」強い思いで動かない身体にクシャリと顔を酷く歪ませる

『悟。大丈夫。僕は大丈夫。だって、君が僕のままにしてくれるんでしょ?』

「壊れたら殺す」氷月からの提案の元、五条が承諾した約束

それは彼を手中に収めてから交わした最初の約束だった
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