SEED.D

□139hit御礼
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アカデミーを卒業し間も無くクルーゼ隊に所属された面々は、ヴェザリウス艦内で待機していた。
そんな中オレンジ色の髪をした少年ラスティ・マッケンジーが口を開く。
「イザークのいいところってどんなとこ?」
「は?」
ラスティ以外の全員が息を揃えて返した。
「うわ、凄い。息ぴったり。」
「いきなりなんなんだ貴様は。」
突然話題の的にされたイザーク・ジュールはラスティの突拍子もない質問に呆れた顔を向ける。
「ラスティのそういうとこ慣れてはいるけど…それってつまりイザークの長所ってこと?」
そしてラスティと同室でアカデミーを首席で卒業したアスラン・ザラが眉根を寄せて聞き返した。
「そう。」
ラスティは笑顔で頷いた。
イザークとラスティ以外の面々が顔を見合わせる。
「うーん…」
アスランや緑の癖っ毛が特徴のニコル・アマルフィも首を捻らせ、普段イザークと仲の良いディアッカ・エルスマンさえも唸っていた。
「貴様ら…全員そこになおれ!」
「イザーク・ジュールの長所かね?」
その状況を笑って見ていたミゲル・アイマンは慌てて立ち上がり敬礼をする。
他の皆もその声に驚き振り返ると我らがクルーゼ隊隊長ラウ・ル・クルーゼの姿がそこにあった。
「く、クルーゼ隊長!」
皆がなおり敬礼する。
クルーゼは手で皆の敬礼を制しにこやかに口を開いた。
「君はとても素直で従順だ。私としてはとても扱いやすい良い部下だよ。」
「っ!ありがとうございます!」
イザークは頬を上気させ喜びに再び敬礼した。
しかしそれを聞いていた他の面々は皆一様に心の中で呟く。
(それって…手のひらで転がせるってことじゃあ…)
「今後も期待しているよ。」
去っていくラウの背中に元気に返事をするイザークに憐れみの目を向ける。
イザークはそんな視線には気付かず得意げに胸を張って振り返った。
「どうだ!クルーゼ隊長は俺のことを良く分かって下さってるぞ!」
「ここまで来ると素直と言うより…」
ラスティがそこで口を閉じるとアスランが続けてしまう。
「単純なんだな。」
「あ、アスラン!」
「なんだとっ!…ふんっ。俺が隊長に期待されているからと妬んでいるんだな、アスラン。」
ニコルが焦りアスランを呼ぶも今のイザークは余程上機嫌なのか良いようにとらえてくれた。
アスランはそんなイザークに溜息を吐くがふと思いつき声を出す。
「あ、」
「なんだ?まだ何か言いたいことでもあるのか?え?」
勝ち誇ったようなイザークを無視しアスランは言う。
「イザークは努力家だな。」
「は?」
イザークの勝ち誇った顔が驚きに変わる。周りの皆もアスランの言葉に耳を傾けた。
「何事にも全力で、訓練に時間を惜しまないだろ?そういう姿勢は好感を持てる。あいつにも見習わせたいくらいだ。」
「あいつ?」
「あ、いや、こっちの話し。」
最後の方は愚痴のようにひとり言になってしまった。それをラスティがすかさず突っ込むもアスランは誤魔化した。
そこでニコルも手を挙げ声を出す。
「あ、はい!僕も見つけました!イザークって意外と面倒見がいいんですよね。アカデミーで僕ちょっと考え事してて次どこ行くか聞いてなかった時があって、そんな時イザークったら僕にちょっかいだしながらもさり気なく教えてくれたんですよ。」
「へー、いいとこあんじゃん。」
ニコルの話にミゲルは感心した声を出す。ディアッカもああ、そんなこともあったなと当時のことを思い出していた。
「なっなっなな…」
当の本人は顔を真っ赤にしアスランとニコルを震える指で差し大声で叫んだ。
「なんなんだ!貴様ら!新手の嫌がらせか!?」
それを聞いたアスランは顔を顰める。
「は?長所を言っているだけだろ?」
「っ!」
イザークは言葉を詰まらせ目を見開く。そんなイザークの様子に気づいた同僚達はこぞって話し始めた。
「あ、それなら俺もあるぜ!」
「ディアッカはいつも一緒なんだからそりゃあるでしょ!それより俺の話はね。」
「くっ〜〜〜帰る!!!」
イザークは勢いよく反転し自室へと戻っていった。その様子をディアッカとミゲルはにやけた顔で見送る。ラスティとニコルは顔を見合わせ笑った。
「ふむ、成る程。イザークは弄ると面白いんだな。」
ミゲルが顎に手を当て納得する。その様子をディアッカはお腹を抱えて笑った。
「もう、可哀想ですよ。」
「そういうニコルもノッてきたじゃんか。」
「それはその…」
「ともかくディアッカはこのあと頑張って。」
「んあー…」
ラスティの言葉にディアッカは溜息を吐く。
「俺の部屋…」
皆がわいわいやっている中アスランは一人イザークの去った通路を見つめ首を傾げていた。
なんで素直に喜べないのかな?
アスランの中では結局イザークに対する謎が増えただけだった。




「うーん…結局性格的にイザークとアスランは似たり寄ったりか…こりゃ今年のモテ度ランキングもまだ分かんないなぁ。仕方ない、二年連続で一位のアスランに賭けとくか。」
ひとしきり収まった通路でラスティは一人投票ボタンを押した。




完 nextあとがき

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