SEED.D

□イザーク・ジュール生誕祭2017
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イザーク・ジュール生誕祭2017






「ジュール隊長お誕生日おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます。ラクス・クライン…」

にこやかにプレゼントを持ちながらお祝いを述べるラクス・クラインに複雑な想いで応える。
何故このような状況になっているのかというと遡ること数時間前。ザフト軍ジュール隊隊長イザーク・ジュールはいつも通り激務におわれていた。しかし今日は何故か上から夕方には帰るよう通達が下される。イザークは不思議に思いながらも上からの指示とあれば仕方ないと外に出た。すると間髪入れず黒いスーツとサングラスをした男性二人に黒塗りの高級車に押し込まれそのままクライン邸に運ばれたのだ。
訳もわからず促されるままクライン邸に足を踏み入れた途端大きな音がイザークを襲う。

「!?」

高い乾いた音で銃でも打たれたのかと一瞬身構える。すると暗かった部屋が明るくなり声が一斉に聞こえた。

「ハッピーバースデー!!イザーク!!」
「………」

全くもって忘れていたが今日は8月8日。イザークの生まれた日つまり誕生日である。呆気にとられるイザークを強引に引いていくのは悪友でありジュール隊でも副隊長を務める色黒の男ディアッカ・エルスマン。
その姿にイザークは驚く。

「きっ…さま!何故ここに!?さっきまで軍に…っ!!」
「ジュール隊長をお迎えに行って頂いた方に遠回りして頂いたのですよ。」

柔らかな笑みを浮かべイザークの目の前に表れたのはこの屋敷の主ラクス・クラインであった。そして冒頭に戻る。

「こちらは私とキラ、それからカガリさんからですわ。」
「アスハ代表から…?」
「参加出来ない分お祝いの言葉と気持ちだけでもと。」
「あ、ありがとうございます…」

困惑しつつ受け取っていると目の端に茶色い髪と青い髪がチラついた。気になり目をやると茶色い髪の青年キラ・ヤマトに青い髪の青年アスラン・ザラが何やら耳打ちをしていた。

「ぁあアスラン!!!」

途端キラは逃げるもアスランは掴みかかるイザークを真正面から迎え討つ。

「一体奴に何を吹き込んだ!!この間も変なことをっ」
「この間?変なこと?」

胸ぐらを掴まれているにもかかわらずアスランは普段と全く変わらぬ首を捻る。

「俺がっ!っ…ら!…ラクス・クラインのファンクラブナンバーワンだとかいうふざけた噂のことだっ!」

イザークは本人を目の前にして言うのも恥ずかしく少し小声でアスランに怒鳴りつける。
アスランは「ああ。」と頷き再び首を捻る。

「え?だって本当なんだろ?だから俺のこと目の敵にしてたんだろ?」
「んなわけあるかぁ!!」
「え?じゃあなんであんなに俺にいちいちつっかかってきてたんだ?」

訳のわからないといった顔で言うアスランにイザークは怒りを更に募らせる。そんな二人を見兼ねたディアッカが口を開いた。

「あぁ、はいはい。今日はめでたい日でこうしてみんながお前を祝ってんだから、今日ぐらいカリカリするのやめろよ。」
「っ…」

イザークはバツが悪くなりアスランを掴んでいた手を離す。
場が収まったところで周りは賑やかにお酒や食事を楽しみながら話を弾ませた。


数年前には敵同士だったものまでいるこの不思議な空間にイザークの口が微かに緩む。
もしもあんな戦争なんかなくて今このような状態になれていたなら、ここには死んでいった仲間達も笑っていられたのかな。そんならしくもない考えを思い浮かべて頭を振る。
ツンと熱くなった鼻の奥を堪えながらふと見渡すとアスランの姿が消えていた。

「?」

そんなイザークに気付きディアッカが近づく。

「どうした?」
「いや…」
「あれ?アスランの奴どこにいったんだ?」
「ふんっ。まぁ、別にあいつがいないところでなんとも思わんがな。」

鼻を鳴らし顔を逸らした。

「!」

するとその先には正に探していたその人物の姿が。
イザークの足は自然と動き出した。
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