忘れない記憶の中で

□第零章
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会長さんから距離をとるように僕の隣に座る。彼らの席から少し離れた場所に来たことで、取り巻きの視線がきつく刺さった。
食事を終え、食堂を出る時、ある生徒が佐波君に向かって何かを投げた。

「…………」(佐波君、危ない!!!)

気付くと佐波君を突き飛ばしていた。
運悪く眼鏡のレンズに当たり、カタッと重みのある音と瞳に切れたように痛みがはしる。

当たった時の痛みと衝撃割れた眼鏡から缶に何かが入っていることが分かる。

投げた生徒を追いかけようとした時ある生徒に腕を掴まれた。

「あんな、彼の事は俺たちに任してお前は保健室に行くのが先やろ」

聞きなれない関西弁。この学校内で関西弁で話す人物は一人しか知らない。風紀委員でありながら一番に風紀を乱してそうな格好である風紀委員委員長の白木昴だった。
一度頷き、持たれている腕に目を移し彼の目を見る。言うことを理解したいのか何も言わずに手を離した。

「ゆーひ、付き添ってやって、俺らも後で向かうから」

「東雲椿、これでちょっとでも止血しとき…」

綺麗にアイロンのかけられたハンカチを渡された。見た目がとかではなくこう言う所が育ちの違いが出るのかもしれない。
ハンカチを当てるのを確認するとゆーひと呼ばれた彼は僕の腕を掴み歩きだした。
『おい!シノには話があるんだ、連れていくな!!!』食堂を立ち去る時に佐波君が声を上げた。委員長は何かを言っているようだった。足を止めた僕に風紀委員の彼は止まるなと言うように腕を引っ張る。

「お前、よくあいつ突き飛ばせな」
歩きながら彼は楽しそうに口角を上げた。確かに普通佐波君に危害を加えるとこの学校の立場悪くなると噂がある。でも体が勝手に動いていた。

「庇ったのに、怪我をさせてとかでお前は一週間の停学処分、身を呈して庇った意味はなんだっただ?」

「………」(佐波君が大怪我しなくて良かったって事かな?)
 
「…………」(それに右目じゃあなくて良かったって思うよ?)

運悪く眼鏡に当たり割れた破片が目に入ったことで、左目は形として失明となった。

停学処分中、寮長が監視を行うこと、そのあとは風紀委員が保護と言う形で話がまとまった。話が終わると彼らは病室を出ていった。

「……」(結果的に動きやすくなったかな)

「………」(この眼鏡気にっていたんだけど)

「………」(それよりはるさんあの子はどうなるの?)

「いや、お前さ…」

扉の開く音が聞こえ、僕達はそっちに視線を移した。先帰ったはずの白木の姿に首を傾げる。メモに書き込む前白木言葉にによって止められた。

「なぁ、右目やなくて良かったってどういう意味なん?」
驚きを隠し、先生と話すように口元だけを動かした。

「………」(元々左目は殆ど見えていない、だから失っても何も困らないってことですね)

「………」(小さい頃交通事故にあって、その時に破れたガラスの破片で瞳が傷ついたとかだったと思います、僕もあとから聞いた話なので詳しくは覚えていませんが)

咄嗟に思い付いた嘘と本当のことを交えて話す。本当のことを混ぜ話す方が嘘がバレにくくなると聞いたことがある。

次の日、理事長のところに行った後、白木に連れり寮に戻ってきた。寮長である滝川詩月と顔を合わし部屋に連れてこられた。今回の事対して納得がいかない様子の滝川に経緯を説明すると眉間を寄せた。

「東雲君、お前はそれで良いの?食堂にいた人間なら誰もがお前がわざと突き飛ばしたとは思わないだろ、それを理事長に説明すれば」

滝川の提案に首を振る。確かにその案が頭に浮かんだわけではない。けどそれをすれば、佐波君との距離が離れる事はない。それに証言をとることに意味があるように見えなかった。

「そっか、じゃあ俺は学校行くけど部屋からは出るなよ?」

「部屋の中のは好きに使って良いから」

『じゃあいい子で待っとけよ』と出る時に恋人にするように優しく額にキスをされた。その時に僕はどんな表情をしていたのか、滝川は苦笑を浮かべていた。
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