忘れない記憶の中で

□第一章
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(本当に食えない人)
風紀委員として行動をするようになって、副委員長である速水の性格を理解した。それと同時にこの人には近づきたくないと思うようになった。

『同族嫌悪だね』

『つばき、気をつけなよ。親睦会に参加の許可が出たことでこれこらお前と転校生君の間に風紀委員(かれら)は入ることは出来ない。て事はね、お前と転校生君の距離は元に戻る』

『もし、またつばきに何かあったらその時は俺も黙ってないよ。今学期までとか待たずに編入してもらうから』

「………」(クロさん今状況を変えることが出来たら僕はこれからもここに居て良いですよね?)

『変わったらね、そうなれば俺がソウさん説得して学園にいれるようにする。何?つばきこの学校気に入った?』

その言葉に頷く。今のところ環境で言うなら最悪だと思うけど僕は此処を辞めたいと言う気持ちは持っていなかった。寧ろ学園の周りや、授業のやり方などは好きな方に入るし、教師が中心でなく生徒中心だからこそ何処か自由な感じがあり、そんな所が好きだと感じていた。

『つばき、面白いこと教えてあげる、きっとこの親睦会で1部転校生を取り巻く環境は変わる。4日間共にするなら接触もしやすいと思う』

電話相手はそれだけを伝えると携帯に手を近づけた。見えていた画面が暗くなり、僕の姿を映す。長く話し込んでいたため、沸かしていたお湯がすっかり冷たくなっていた。

(親睦会で役員と接触をしてみるべきかな)

「椿ちゃん、ひなちゃん先生の分もお茶お願い」

急に肩に触られ反射的に体がはね、手に持っていたカップを離し音を立てて落ちた。落ちたカップが割れ周りに飛び散っている

『どうして、私の邪魔をするの?』
聞こえた声に同じ言葉を繰り返し、痛くなってくる頭と同じように息が苦しくなる感覚に襲われた。

「…………ゃん?」

「椿ちゃん大丈夫?」

名前を呼ばれ顔を上げ目が合うと柳瀬は苦笑を浮かべ、直ぐにいつもどうりへらりと笑った。

「もー。椿ちゃん怪我してない?大丈夫?」

「………」(大丈夫です)

手話と同時に口を動かし伝え、もう一度割れたカップと柳瀬を交互に目を向けた。

『すみません、すぐにお茶を入れ直します』


ここは違うのだと自身に言い聞かせて割れたカップの拾い集め、もう一度ポットに火をかけた。
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