さて、月霞むその夜を抜け
□四年生と時代考証
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忍術学園の片隅に、五名の人物が集まっている。
その内の一人、四年い組の平滝夜叉丸が枝を筆代わりに地面に字をスラスラと書き連ねた。
『時代考証』
精緻な字で書かれたそれ、ふと、隣に同じく四年い組の綾部喜八郎が立ち、その隣に『なんちゃって』と中々の悪筆で書き加える。
「こら、喜八郎。勝手に書き足すな」
滝夜叉丸の咎める声に、喜八郎はちょんと唇を尖らせ首を傾げる。
「だってこういうのきちっと決めちゃうと後々矛盾が出て来てめんどーだし。ねえ、タカ丸さん」
「え、僕?」
突然話を振られた四年は組の斎藤タカ丸はぱちくりと目を瞬かせる。
「う、うーん……なんちゃってはどうか分かんないけど、っていうか僕難し過ぎる話は苦手だからなあ」
困ったようにへにゃりと笑うタカ丸に「大丈夫ですよ」と笑うのは四年ろ組の田村三木ヱ門。
「『時代考証』と書くと大袈裟な感じがするでしょうが、この学園のアイドル、田村三木ヱ門が閲覧者の皆様にも分かりやすく素晴らしい説明をさせて頂きますので!」
綺羅綺羅しい笑みを何処へともなく振り撒きながらそう宣った三木ヱ門を、鼻で笑うのは滝夜叉丸だ。
「ふっ、何を言うかと思いきや。この座学、実技共に学年一の平滝夜叉丸を差し置いて分かりやすい説明を出来る者は他にはおらん!」
「何を偉そうに!この『なんちゃって時代考証』は石火矢に関わる事柄もあるんだ!というか石火矢が中心だ!この僕こそが説明するのに相応しい!!」
「ははははは!なんだか小者がキャンキャン煩いなあ!優秀すぎて聞こえない!」
「カス夜叉丸!」
「なんだバカヱ門!!」
「聞こえてるじゃないかカス!!」
お馴染みの好敵手同士の高め合いもといキャットファイト的足の引っ張り合いを始めた二人に、タカ丸は困り顔。喜八郎は我関せずで地面に落書きを始めている。
「ていうか、本編の主要キャラって守一郎だから守一郎がしたらー?」
地面にぐりぐりと枝で穴を上げながら喜八郎は、タカ丸と同じく困り顔をしている四年ろ組の浜守一郎を見る。
「え、いや」
「守一郎!私だよな!私がやるのが相応しいよな!?」
「守一郎!僕に決まってるよな!?」
「えっ!?ちょっ!?」
三木ヱ門と滝夜叉丸に揃って詰め寄られ、守一郎はもだもだと後退りする。
「……あっ!じゃあ、皆でやるってのはどうだ!?」
ふと思い付いた様に叫んだ守一郎に四年全員は微妙な顔をする。
「皆かあ……うちって一番、団結力無い学年って言われてるんだけどね」
タカ丸が苦笑と共に言えば、皆うんうんと頷く。
「いや、だからこそこういう時に一致団結して汚名を灌ぐべきだろう!!」
守一郎には何かしらのスイッチが入ったらしく、地面にざかざかと線を書き出した。
「話が纏まらないっていうんだったら司会を決めれば良いんだ!そいつがしっかり話を纏めて皆にバランス良く話を振れば分かりやすい説明だってできるだろ!?」
四年生一同は顔を見合わせ、「まあ、それもそうか」と銘々多少の差はあれど納得の内に地面に書かれたアミダくじに名前を書き連ねるのだった。
「というわけで次ページより、本編のざっくりした(強調)時代考証になります!会話文オンリーなので所謂『台本形式』で書かせて頂きたいと思っています!本当にざっくりなので読んで頂かなくても支障はありませんが、読んで下さる閲覧者の皆様はどうぞお次のページへ!!」
守一郎が何処へともなく高らかに声を上げるのだった。
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