黒子のバスケ

□あいつに夏は似合わない
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ー明日、デートしようよー


渾身の猫被りスマイルで、
唐突に花宮が言い出すもんだから、
思わず頷いてしまったが…
一体なにを考えているんだ。

天才・花宮様の考えていることなんて、
そもそもわかるはずがないのだが、
どうしても考えてしまった。

これは本当の意味での “デート”なのか。
それともなにか企みがあるのか。

前者だとしたら、
今までそんな雰囲気は全くなかったし、
突拍子がないにも程がある。

しかもこの夏日に遊園地ときたもんだ。
なんで遊園地なんて行きたいんだろう?
最も花宮に似合わないもののような…

ってことはやっぱり、
本当に “デート”なんだろうか。


「あ…」


約束の10分前。
待ち合わせ場所には既に、
花宮の姿があった。

1年からの付き合いだけど、
私服姿を見るのは何気に初めてだ。

なんか、ちょっと、かっこいいかも…?


「花宮!お待たせ!」


「あ?ああ…早いな。」


「花宮こそ。
 結構待った?」


「いや、今来たとこ。」


文庫本を広げてる時点で、
それはきっと “ウソ”なんだろう。
だけど、花宮にそんな気遣いができるなんて予想外で、
気遣ってくれたことも嬉しくて、
そこはつっこまないことにした。


「行くか。」


「あ、うん。」


遊園地に向かって歩き出す。
さりげなく車道側に陣取る花宮の優しさが新鮮。
本当はいい奴なのかな?


「女子みたいな格好だな。」


…前言撤回。
デートだっていうから一生懸命服を選んだのに、
小馬鹿にするこんな乙女心のわからないやつが、
いい奴なわけがない。


「女子みたいじゃなくて、女子なんですけど!」


「そりゃ知らなかった。」


こいつといて、
デートなんて甘い雰囲気になるはずないか。
ちょっと浮かれていた、
さっきまでの自分を殴りたい。


「すみませんね、かわいくなくて。」


「……言ってねえ。」


「え、なに?」


「なんでもねえよ!前見て歩け。」


「いたっ!」


珍しくボソッと話すから聞き取れなかったのに、
聞き返したら理不尽に頭をはたかれる。

瞬間見えた花宮の顔が、
少し赤い気がするのは、
この気温のせい、だよね?












〜To be continued〜




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