愛をとめないで

□〔第2話〕想いの種
1ページ/3ページ

秒針が時を刻む規則正しいリズムとは異なり、
不規則に響くキーボードを叩く音。

今回の事件は中々複雑で、
報告書がうまく纏められずにいた。

ずっとパソコンと睨み合っていたせいで、
肩がガチガチに固まっていたので、
思いっきり伸びをして窓の外を見た。

夜の顔を見せる風景から、
隣のデスクへと目を移す。



もう終わった頃だろうかー・・



佐々木女史が青の使徒だという証拠は、
太宰さんにこっそり託した。
彼ならうまく扱ってくれるだろう。

しかし、あそこまで国木田さんの信用を得られていないとは、
我ながら笑えてくる。
何度も叱られたことはあったが、
あんなに感情的に怒鳴られたのは初めてだ。

信じてもらえなかったのはショックだったけれど、
だからと言って国木田さんを軽蔑したわけでもなかったので、
国木田さんが自分の目で真実を確かめた後は、
今まで通りの “面倒くさい後輩”でいようと決めた。

責めるつもりも、
バカにするつもりもない。

ほら見たことかなんていうのは無粋だ。

気になる人のほうを信じる気持ちは、
よくわかるから。



エレベーターの到着する音がして、
足音がこちらに近づいてきた。


ああ、帰ってきた。









次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ