文豪ストレイドッグス

□その手に触れるまで-1-
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以前太宰さんが、
国木田さんから勝手に拝借した手帳を見せてくれたことがあった。

そこに書かれた"理想の女性像"は私なんかとは程遠い。
っていうかこんな人いるのか?と思うほど、
細かく書かれていた。

国木田さんらしいと言えばらしいが、
それは私の失恋を暗に示しているだけの物だった。


「…今日はこんなことをしにきたのではない。」


あーあ。

この他愛無いやりとりも
ついに"こんなこと"って言われてしまったよ。


「ここに何か用があって来たんですか?」


「ああ…」


目線はカップに向いたまま答える。

そういえば今日、一回も目が合ってないな…

もはや嫌われて…


「お前、今日は何時に上がる?」


唐突な質問に
全く違うことを考えていた頭がハテナでいっぱいになる。


「えっと、仕事ですか?」


「それ以外に何がある。」


「7時、ですけど…」


「そうか…」


素っ気ない言葉はいつも通りなのに、
その顔は普段と違って少し赤い。


「今夜、食事でも行かないか…?」


脳が国木田さんの言葉を理解するより先に。
私の顔が赤くなっていく。


「しょ、食事…?ふ、2人で、ですか?」


「嫌か?」


「え、いや、そうじゃなくてっ!
えっでも、それって…///」


「さすがのお前でも、
デートに誘われたことくらいはあるだろう?」


いつもと同じ人を小馬鹿にしたようなセリフ。

だけどそれは、とても優しく聞こえた。







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