長編(男主)

□第4話
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一番に目を覚ましたのは、一番に眠りについた華宮だった。体を起こし、大きく伸びをした華宮は未だに覚醒していない脳みそで昨日何をしていたかを思い出そうとしていた。


「…二瓶鉄造……」


ようやく思い出した華宮は、それだけ呟くと、寝起きとは思えないほどキビキビとした動きでクチャの外へ出ると、いつものように白銀に煌めく雪を眺めていた。


「早いな」

「おはよう、谷垣。お前も早いな……あ、もう違うのか」

「…」

「おはよう、杉元。早く準備しなよ」


いつも通りの朝だったため、つい谷垣の名前を出してしまった華宮は、困ったように杉元に笑いかけた。杉元はその笑顔につられずに無表情のまま彼の隣についた。


「何を見ていたんだ?」

「雪だよ」

「雪くらいいつでも見れるだろ」

「妹の名前が幸なんだ。だから、雪を見たら妹を思い出すんだ」


妹の話をしだした瞬間、優しそうな表情になったのは杉元もすぐに見て分かった。登ってくる日差しに照らされながら、華宮は黙ってこちらを見つめている杉元に視線を合わせた。


「なに?」

「これが終わったら、故郷に帰った方がいいんじゃないのか?家族がいるなら尚更」

「いや、帰れない」

「…ワケありか?」

「妹が病気なんだ。脳の病気らしい。すぐに何でもかんでも忘れてしまうんだ。だから、きっと人殺しの僕なんか分かりっこない」

「…」

「妹に、あなた誰?なんて言われたら耐えられない。だから、帰らない」


子どもが好きなのは、妹が好きだからか、と納得した杉元は目をふせた。華宮は話を終えると、まだ寝こけている白石とアシㇼパを起こすべく、クチャまで戻って行った。出発は早い方がいいと考えたからだ。


4人は準備を終え、クチャから出てきた。白石は不満があるようで、寝ぼけながらも杉元に話しかけた。


「なんで俺も一緒に行かなきゃなんねーの?」

「二瓶鉄造を確認できるのはお前だけだろ」

「行こう。囚人を捕まえて、レタㇻを守る!!」


アシリパたちは囚人がどこにいるかの目星を立てるために、周辺が見渡せる高い位置まで向かった。すると、煙がまっすぐ空に上がっているのが目視できた。


「狼煙だ」

「昨日、私たちが鹿を獲ったあたりだ」


狼の糞には硝酸分(火薬の原料)が多く含まれており、燃焼温度が高く、煙が散ることなく、まっすぐ高く上がったため、狼煙に使われたと言われている。
あの狼煙が気になったアシㇼパたちは、そこまで向かおうと山を下って行った。
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