百合
□IとUとOとJ
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私は今まで愛衣のことをなんだと思ってたんだろう。
素直だからって、子供じゃないのに、愛衣に誰かを好きになるなんてことはないと思ってた。
ごめんなさい。私、自分が恥ずかしい。
自分の言い訳のために、あなたの気持ちを、ないことにしてたなんて。
なんとか、ありがとう、と絞り出して、赤い袋を受け取る。
ありがとう、私を好きになってくれて。
もう泣いてなんていられない。涙を拭って言う。
「私も、愛衣が好きです。ずっと好きでした。
お付き合い、してください。私も、恋人に、なりたいです」
いつもみたいに、恰好を気にしてなんかいられない。
愛衣がふふ、と笑う。
「よかった、じゃあ、よろしくね」
「こ、こちらこそ! よろしく、お願いします!」
あ、そう思ってたのにやだ、またなんか恥ずかしくなってきた、別の意味で。恰好、気にしちゃう!
今、やらかさなかった? 恋人になりたいって……てか私からも申し込んじゃった、返事しないで……あれ、それもOK? これからお付き合いできるんだよね? えっと、結局両想いだったってこと?
私がいつものごとく思考停止の行動停止に陥ってると、愛衣はそんなこと気にしないようで、やったーと飛び跳ねている。
「よかったー、私の勘違いだったらどうしようかと思ってた」
「……私が愛衣のこと好きだって、わかってたの?」
「最初は、冗談だと思ってた。でもほんとは必死に隠そうとしてるのかなーって思い始めて……」
「ばれてたんだ……」
「きっと梨沙のことだから、私が梨沙のこと好きになるなんてことないけど諦めるのは無理だし
このまま笑ってごまかそーぜとか思ってんじゃね? って思ったら確信した」
……やっぱり、ほんと、ごめんなさい、まじでその通りです。
私そんな甘いこと考えてました。
ほんと愛衣のこと見くびってました。
ごめんなさい。
「いつから一緒にいると思ってんの。今だって『超情けない超恥ずかしい、消えちゃう』とか思ってるでしょ」
まさに。
「ははは、これだけ分かってたら私達、うまくいくんじゃない?」
こんな私を受け入れてくれる人なんて、誰もいないと思ってた。
でもそれがこんな身近にいて、しかも愛衣が、だなんて。
世の中案外、敵ばかりじゃないのかもしれない。
「今までよりも、もっとうまくいく気がしてきた」
「やった!!」
愛衣が、私と一緒にいることを、嬉しく思っている。
愛衣が、私といるこれからの未来を、楽しみに思っている。
初めてなくらい嬉しくて、愛衣と見つめあい、笑いあう景色が見えてくる。
もう私は、ひとりじゃない。
日が落ちて冬の風に包まれた中、手をつないで歩くイルミネーションの道は、ふたりの前にまっすぐと輝いている。