百合
□喧嘩するほど仲が良い
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まったく身に覚えがなかった。
何を目の前のこいつは的外れなことを言っているのか。
そもそも当てられる的も何も、こちらにはないのだが。
「私がなんで怒ってるかわかる?!」
だから本当にこいつは何をしているんだ。
きゃんきゃんとうるさい。つまらない奴だ。
普段私がどれだけ可愛がっていて、楽しませてやっているのかが分からないのか。
気がついたら右手を伸ばして顔面を掴んでいた。
引き寄せて、唇で軽く、頬を吸う。
顔を放したら、その頬に反対の拳を思いっきり叩き込んだ。
その感触と、離した手から飛んでいく頭を見て、ありゃ脳みそまで響いたな、なんて他人事のように思う。
床でぴくりと手足を震わせる音花に背を向け、碧は部屋を出る。
叩きつけられた音花は、しばらくするとゆっくりと起き上がり、そのまま静かに部屋を出て行った。
紅蓮はどうしたらいいかわからず、部屋の隅で魔法陣を書いて遊んでいる。
こいつらは人間じゃなくて本当に良かったな。
リリィは心の底からそう思った。