百合
□リバース
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私の半歩前を歩く碧生。
その白い首筋の下を想像して、私は初めて、この人と肌を重ねたいと思った。
その瞬間この感情の正体も、誰にも告げてはならないことも、これが叶うことは一生ないことも、全部わかった。
しかし不本意な形とは言えこの夢想は叶い、しかもその中で生まれた私のわがまま――この人に抱かれたい、なんて――も、今叶おうとしている。
人生捨てたもんじゃない……どこか誤魔化そうとする頭がそんなことを呟くが、覆いかぶさる碧生の目には、煩悶と恋慕と熱情……。
ふと湧きあがった、この人と愛しあいたい、という思いも、きっとこれからは叶えられるだろう。
碧生の必死そうな背中に腕を回すと、その手つきもやわらぐ。
ふってきた熱い口づけを唇で受け止めると、もうその体は止まらない。
この行為が終わったら、ちゃんと思いを伝えよう。
そう思うと彬は、愛と色とが渦巻く中に意識を落とした。