百合

□IとUとOとJ
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 いや、そんなの出さずにさっさと諦めろっていうのがもっともな意見なんだけど……
 私、諦め悪いから!
 しつこいって、そんなじゃなきゃ愛衣のわがままについてけませんっ。

 そこで迷ったのが、箱と中身、どっちをハート形にするか。
 とりあえずどっちにしても、にへら、って笑ってごまかすのはいつも通り。
 渡した時と目の前で開けた時、どっちでうへえ、って顔してもらうか……
 もっとまっすぐ付き合えないものかなんて、一瞬自分にいらついたけどね。

 最後までそこを迷って、前日にようやく箱を買いに行った。
 形はハート、色はピンク。
 だって四角い中開けてハートじゃ、なんだかガチっぽくてヤでしょ。



 当日。

 前の晩、箱の中は可愛くしようかシンプルにしようかだとか、どうやって渡そうかシュミレーションを何度か通したりだとか、そうしてやっぱりできない、いやできるやってみせる! だとか、

 そんなことをしていたら、布団に入ったのが2時。それから寝付けなくて、何時だろう。まあ、起きれたからいいでしょう。

 寝ぼけ頭で変なこと口走らないように、それだけを気を付けて……うん、うまく行ってる。
 移動教室のない授業の合間、みんなにクッキーの小さい袋を渡しつつ、愛衣にも一つ。
 そして顔が上がってこちらを見たときに、

「おいしいの、別にあるから」

 微笑んで、放課後にね、と一言。

 はいはーい、と嬉しそうに返事をする愛衣。

 笑顔を絶やさず隣の席の子にもう一袋渡しに行けば……よし、成功!!
 怪しまれずに、愛衣とのバレンタインの放課後をゲット!

 しかも少しして一口食べてみたら、すごい目をキラキラさせて、こっち見てきたの!
 放課後もっとおいしいのあげるから、待っててちょーだいっ!

 ……なんて思ってたのに、なぜ、こういう時に限って、センセは人を呼び出すのでしょうか!
 まあ理由は明らかなんだけど、私の数学がダメ過ぎるって!
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