平凡で普通な俺の話を聞いてくれ!!

□普通くんと潔癖もどき
1ページ/1ページ

 その日の昼休み。ナルシくんと昼ごはんを共にする予定だったのだが、あのナルシス野郎は「用ができた」だけ言い残し教室を出ていった。
 まぁ携帯電話を持っていたし、大方女からの電話かメールだろう。アイツから約束してきた癖に……と少しイラつき気味に廊下を歩いていれば、不意に「平本君。」と自分の名前を呼ばれる。

「あ、紀零先輩。こんにちは。二年生のフロアに来るなんて珍しいですね。」

 色素が薄い長髪を一つに束ね、身なりの整った彼は紀零 守希(きれい すき)先輩。ひとつ年上で俺が入っている美化委員会の委員長だ。

 紀零先輩はふわりと笑い、「君に用があったのです」と言った。

「用ってなんですか?」

俺がそう問えば、先輩はがさりと大きめの紙袋を俺に見せた。

「なんですかこの袋……って、え?タワシ?」
「そうです」

 柔らかい笑みで頷く先輩に、多少動揺しつつも「なぜタワシ…?」と疑問を述べる。

「以前生徒会に『1クラスにボール1個』という 要望が出されたでしょう?」
「あぁ、あの生徒が小学生みたいな要望出し  たっていう、あの?」
「そうです。それがタワシになりまして」
「なんでタワシに!?いらない!!」
「しかも一人ひとつらしいのです」
「なんでだよ!!誰得だよ!!」
「『お前は美化委員だから配れ』と生徒会に頼 まれまして」
「先輩それいいように使われてますよ!!」

 そうでしょうか、と呑気に笑う先輩から袋をひったくり、「俺がやりますよ!!」とダッシュでその場を去った。

 だって先輩、華奢だから!!袋両手で持ってたのにぷるぷるしてたし!!

 先輩は後ろから「助かりますー」と声を出していた。


「……全く…
 どちらが上手く使われているのですかねぇ
 平本君…
 ……まぁ、そんなところもたまらなく好きで すがね。」


 俺はその日全校生徒にタワシを配ってまわった。なぜかみんな喜んでいたから良かったな。
次の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ