平凡で普通な俺の話を聞いてくれ!!
□普通くんと潔癖もどき
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その日の昼休み。ナルシくんと昼ごはんを共にする予定だったのだが、あのナルシス野郎は「用ができた」だけ言い残し教室を出ていった。
まぁ携帯電話を持っていたし、大方女からの電話かメールだろう。アイツから約束してきた癖に……と少しイラつき気味に廊下を歩いていれば、不意に「平本君。」と自分の名前を呼ばれる。
「あ、紀零先輩。こんにちは。二年生のフロアに来るなんて珍しいですね。」
色素が薄い長髪を一つに束ね、身なりの整った彼は紀零 守希(きれい すき)先輩。ひとつ年上で俺が入っている美化委員会の委員長だ。
紀零先輩はふわりと笑い、「君に用があったのです」と言った。
「用ってなんですか?」
俺がそう問えば、先輩はがさりと大きめの紙袋を俺に見せた。
「なんですかこの袋……って、え?タワシ?」
「そうです」
柔らかい笑みで頷く先輩に、多少動揺しつつも「なぜタワシ…?」と疑問を述べる。
「以前生徒会に『1クラスにボール1個』という 要望が出されたでしょう?」
「あぁ、あの生徒が小学生みたいな要望出し たっていう、あの?」
「そうです。それがタワシになりまして」
「なんでタワシに!?いらない!!」
「しかも一人ひとつらしいのです」
「なんでだよ!!誰得だよ!!」
「『お前は美化委員だから配れ』と生徒会に頼 まれまして」
「先輩それいいように使われてますよ!!」
そうでしょうか、と呑気に笑う先輩から袋をひったくり、「俺がやりますよ!!」とダッシュでその場を去った。
だって先輩、華奢だから!!袋両手で持ってたのにぷるぷるしてたし!!
先輩は後ろから「助かりますー」と声を出していた。
「……全く…
どちらが上手く使われているのですかねぇ
平本君…
……まぁ、そんなところもたまらなく好きで すがね。」
俺はその日全校生徒にタワシを配ってまわった。なぜかみんな喜んでいたから良かったな。