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□一番欲しいのは〜大ちゃんB.D
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ヒロの部屋

お気に入りの大きめのソファー

大好きな柔らかいクッション

脱ぎっぱなしのシャツ

書きかけの詩

無造作に置かれた車の鍵

2人で撮った写真

     ・

     ・

     ・

でも・・・ヒロが居ない


─PM.11:50─

 もうすぐ日付が変わろうとしているのに博之は帰ってこない。

「やっぱり無理なのかな・・・」

 誰も居ない空間に呟く。

 目の前のテーブルの上には、誰へとも誰からとも書かれていない・・・小さな白い紙。

 綺麗な字で一人だけに向けられた伝言。

『絶対に今日中に帰るから!』

 仕事なのは分かっていたし、同じ業界にいれば予定終了時刻なんて有って無いような物だということは良く分かっている。

 けれど今日だけは帰ってきてほしい、そう思ってしまうのは、他の恋人を持つ者達と同じ・・・そう大介も同じ様に。

─PM.11:52─

 ふと時計を見る・・・

「あと8分だよ、ヒロ・・・僕が一番欲しいのは…なのに。」

 独り言は静かな部屋の空気に溶けて音にならなかった。

 手持ち無沙汰に吸いたい訳でもないタバコに火をつける。

 苛々しながら紫煙を目で追っては時計に視線を移して小さく溜め息をつく。


─PM.11:58─

 指に熱さを感じて視線を戻すと、いつのまにか火を点けただけのタバコが短くなっていた。

 灰皿にタバコを押し付けて、何本目かのタバコに火を点けようとライターに手をのばす。

 ふと、鍵の開ける音とドアの開く音、そして博之の声。

「大ちゃんただいま〜、遅くなってごめんね。」

 リビングの入り口まで行くと勢いよく扉が開いた。

「おかえり、ヒロ」

 入り口まで来てくれた大介に自然と笑みが零れる。

 そんな行動に大介の想いを感じてギュッと抱きしめた。
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