本棚【野村忠信】

□冷たい雨
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空を仰ぎ

煌びやかな街の灯に邪魔をされた

冷たい雨を降らす

星ひとつ見えない暗闇へと手を伸ばす。

どうしたら涙は涸れるの?


答えは、出ない。

青くて暗い

真夜中という海の中

ゆらり、ゆらり、と漂うように

世界が滲む。


ああ

俺の小指に絡む赤い糸は

誰に繋がってるの?

どこにいるの?

見えないよ

早く

早く

君に逢いたいのに…。





目が覚めると、窓を強く叩きつけるように降る雨の音が聴こえてきた。

壁の時計は7時を指していて、ベットに入ってからまだ数時間しか経ってないことに、思わず溜め息が洩れた。


テーブルの上に置かれた鍵。



―――フラッシュバック。



半年前にも同じような光景を見た気がする。

2ヶ月くらい付き合っただろうか。


同じ言葉を耳にした。


『野村さんって、わからない人ね。』


別れる時に言われるのは、いつもこの台詞。

…仕方ないよね、ありのままの自分があまりにも卑怯に思えて、見せるのが怖くなってしまうんだから。


目の前の恋人に、心から離れてくれない違う人の面影を見ては較べてしまう、最悪な彼氏だったんだよ俺は。


誰かと一緒にいれば、何かが変わっていくのかもしれないと思っていた。

だけど、自分の気持ちが変わらない限り、何も変わらない事に、最近、ようやく気付いた。

…どれだけ未練がましい男なんだろう。



白いドレスに包まれ、桐沢の隣で幸せそうに微笑む彼女を、早く過去にしてしまいたいのに、その光景は頭から離れる事なく、磔にされたように動けない。

思い出す度に、胸が痛む。


自分が選んだ道は、間違ってはいない事だけは解る。

彼女の一番の幸せを、叶えることは出来たのだから。

それでも時々、あの時、別な選択肢を選んでいたら、どう変わっていたのだろうと、ほんの少しの後悔が顔を覗かせてくる。


いつになったら変われるのだろう。


明日?


一週間後?


それとも、一生変わらずに過ぎてしまうのだろうか。


寂しさを自分の都合だけで癒そうとするなら、相手を傷つけ、きっといつか罰が当たる。


全てが思い通りになる事はなくて、いくら欲しがっても手に入らないものもある。


答えが出るまでもがき苦しみ続ける事が、傷付けた人達への罪滅ぼしなのだとしたら、これ以上の拷問はないだろう?



雨音は続く。


どろどろと澱む感情。


いっその事、この冷たい雨が、俺の全部を洗い流してくれたらいいのに。


雨は、止まない――――。


END



◆あとがき◆

リヴィルドものです。
もし、洋さんと忠信さんがヒロインちゃんを巡ってトライアングルだったら…の話。

忠信さんも洋さんも、叶わぬ恋に胸を痛める切なさが似合うなぁと思って。

雨がキーワードだったので、忠信さんになりました。
「面影追いの恋」って、切ないですよね。

2017.5.12



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