DC
□ねぇ聞いて!
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お昼過ぎ、ランチタイムも終わりお客さんの居ない店内のBGMに混じって外から子供の声、そろそろ小学生は下校時間か
カランとドアベルの音と共に見知った人物が姿を見せた
「こんにちは」
「いらっしゃいませなまえさん、カウンターにしますか?」
「あー、いや、今日はあっちで」
あっち、と指を刺したのは奥の窓側の席
いつもならお昼の混み始める前に来店してカウンター席を確保するなまえさんがこんな時間に来て違う席を指定した時点で何か有るのだろうとは思ったが彼女にもプライベートと言う物がある
誰かと待ち合わせでもしているのだろうか、席に着くとどこかそわそわと窓の外を気にしている
「今日はどうされますか?」
「ホットコーヒーと、アイスコーヒーを」
成程、待ち合わせの相手は小さな名探偵か、注文を受けキッチンに入ると再び来客を知らせるベルが鳴り、現れた人物は予想通り
「いらっしゃいコナンくん」
「こんにちは安室さん、あの、なまえねぇちゃん来てる?」
「うん、奥の席で待ってるよ」
ありがとう!と笑顔で応える姿はどこから見ても小学生にしか見えないがその中身は、まぁこの話はまたにしよう、コナンくんが席に着いたのを見届けて注文された物を持って近付くと何やら真剣な顔で話をしていた
「なんで俺がそんな事」
「だって、こんなの頼めるのコナンくんだけだし…」
「お待たせしました、何かお困り事ですか?」
背後にギクリと効果音が付きそうな程明らかに動揺している姿は彼女の素直さの表れか、目線を泳がせコーヒーを一口、対して向かいの席に座る彼はむっすりとなまえさんを睨み付けている
「だって安室さん、なまえねぇちゃんてば」
「ちょっと!コナンくん!」
「そんなに隠されると気になりますね」
「いや本当に、本当に何にも無いんで!」
「隠し事なんて、僕となまえさんの仲なのに」
「え?なまえねぇちゃんと安室さんてまさか」
「え!?いや待って違うから!」
手をブンブン振りながら必死に何かを隠そうとするのを見るときっと彼女にとって大事な事なんだろう、なんだか、そこまで隠されると面白くないな
「僕で良ければ力になりますよ、探偵、ですから」
「や、あ、あの、ちょっと、安室さんあの、ちょっと、近い…て言うかコナンくん見てる…」
ソファー席に座っているなまえさんを窓側に追い込むように隣に座ってみれば、必死に顔を背けているが耳まで真っ赤になっているから誰が見ても照れているのがバレバレだ
「いやあの、これは流石にちょっと、いくら安室さんでも、無理かな…」
「ですがその内容を聞いてみない事には分かりませんよ」
「いやでも先に相談したのはコナンくんだし、安室さん忙しいでしょうから手間掛けさせる訳には」
「なまえねぇちゃん、そろそろ白状したら?」
ズズっ、と残り少なくなったアイスコーヒーを飲み干し呆れ顔で今すぐにでも帰りたいオーラを出している彼には申し訳ないがお客さんも来ないし少し暇潰しに付き合って頂きたい
「さぁ、ほら、言ってください」
「えっ、いや!だから!あっ、でも待って安室さんならワンチャン、いや、ん?いやでもそれはなんかちょっと、あー…」
「ねぇなまえねぇちゃん自分が今どういう状況か分かってる…?」
「へ?え?……え!?ちょっ、安室さん近い!」
何か他に考えがあったのかブツブツと独り言を言いながら顎に指を当て俯いている彼女は壁と僕に挟まれている事にはコナンくんに言われるまで全く気付いていなくて、顔を上げた瞬間恐らく反射的だったんだろう、両手で僕の肩を押してきた
「あ、あああ、安室さん!仕事しなくていいんですか!?」
「ご心配無く、梓さんは午前で上がりましたしマスターは一日居ないので」
「なっ、いやでもお客さんが」
「来ませんね」
「ねぇ俺もう帰っていい?」
とうとう痺れを切らした名探偵は席を立とうとしていて、流石にからかい過ぎたようで彼女の顔からは湯気が出ている様にも見える
さて、僕には言えない要件とは一体何なのだろうか、そろそろ真実を明かしてもらわねば
「それで、なまえさんのご依頼はなんだったんです?」
「え、いや、あの、だから」
「はい、どうぞ」
「…………あの、………か、……です」
「ん?何です?もう少し大きな声で」
「……か、仮面ヤイバーと!写真が!撮りたいんです!!」
何かを諦めたようにバッと顔を上げたなまえさんの目には真っ赤な炎が灯っているようにも見えた
「……か、仮面、ヤイバー」
「今週末仮面ヤイバーショーがあるんですけどそのショーの最後に仮面ヤイバーと写真が撮れるんです、でもああいうのって子供がメインと言うかほぼ親子じゃないですか、でも私一人暮らしだしファミリーに溢れた週末のショッピングモールに女一人で写真なんていくら私でもちょっと無理って言うか社会的に終わるって言うかもし職場の人に見られたら私もう会社行けないしでもコナンくんなら私のお願い聞いてくれるかなって思ったんです!だってコナンくんなんだかんだ優しいから!あわよくばコナンくんと写真撮りたいだなんて全然思ってないですから!!」
「……な、成程、言いたい事は分かりました、そういう事なら僕よりコナンくんのほうが適役ですね」
「ちょっと安室さん、僕行くなんて言ってないよ」
「お願いコナンくん!君しか頼れる人は居ないの!」
この後延々と仮面ヤイバーの何たるかを語られ、こんなにもお客さんが恋しいと思う事は当分ないだろう
ねぇ聞いて!
(なんだか親子写真みたいですね)
(変装してまで着いて来なくても…)
(もう二人付き合ったら?)
(そうしましょうか)
(は?)
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