DC

□ミラクル☆ピンチ
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※架空のキャラクターが出てきます
※夢主はコスプレイヤー



「なまえさん趣味ってあります?」
「…………な、何企んでるんですか」
「いえ純粋に気になったので」


洗い終わったお皿を拭きながらそう尋ねてきた彼はいつもと変わらぬ人当たりのいい笑顔、多分お客さんが私以外に居ないから暇なんだろうなこの人


「趣味かぁ、これと言って無いかな」
「おや、意外ですね、なまえさん家から出ないイメージありますけど」
「それは喧嘩売ってるって事で良いですか?買いますよ?」
「いやそうじゃなくて、インドア系の趣味がありそうだな、と」


趣味、そう言ってしまえばそうなのかもしれない事は一つある、もうこれは私にとっての生き甲斐で仕事行くのと同じ位生活の中で当たり前になっているけれども

だからこれは趣味の内に入らない、つまり別に安室さんに言う事でも無い訳だ、いや、言う訳には行かない、これを知られたら私きっともう米花町を歩けなくなる


「じゃあ安室さんの趣味は?」
「なまえさんの観察ですね」
「すぐそういう事言うんだもんなぁ」
「嘘だと思いました?」
「え?まさか本気で言ってるんですか?」
「すいませんちょっと電話が」
「あっ、ちょっ」


安室さんの携帯っていつも良いタイミングで電話かかってくるけど誰か外で監視でもしてるのかな


***

「はぁ〜やっぱり可愛い!」


ポアロから帰るとタイミング良く注文していた荷物が届いた

開封してみるとその中には大好きな女児向けアニメの主人公が身に付けているのと同じ、フリルとリボンが沢山付いた衣装で、そりゃあこんないい歳した社会人が魔法少女の格好するのが趣味ですだなんて言える訳が無いという話だ、いや魔法少女だけじゃない、学園物もファンタジーも着るけど


「え、めっちゃ可愛い、いやこの衣装やっぱ可愛いな、ウィッグ頑張った甲斐が有るってもんだわ」


鏡に向かって独り言をブツブツ呟くのも最早息をするのと同じ事のようになってしまっているが、こうしてテレビ画面の中のあの子達と同じ服を着て、同じ髪色で髪型で、自分とは分からないくらいにメイクをして、この時だけは仕事の事もみんな忘れられるから止められない

取り敢えずSNSに載せる用に自撮りでもするかとほおり投げていた携帯を拾い上げると同時にチャイムの音が鳴った、え、待て待て待て、こんな時間に誰だよ今他に注文してる物無いはずだぞ!?

足音を立てないように恐る恐るインターホンのモニターを確認するとそこに居たのは先程私に笑顔で手を振って見送ってくれた安室さんだった


「え、安室さん!?」
「なまえさん?そこにいるんですか?」
「(やべぇでかい声出しちゃったよ)は、はい!すいません、今ちょっと出れなくて」
「何かあったんですか?」
「いや!えと、ちょっと今ドアを開ける訳にはいかないというか、緊急事態と言うか」
「大丈夫ですか!?開けますね!」


開けますね、ってなんだよ鍵かかってんのに開けられるわけ


「なまえさん!」
「不法侵入!」
「これくらいの鍵なら朝飯前です」
「誇らしげに言う事じゃないですけどね!」


そうだよ忘れてたけどこの人ピッキングくらいならお手の物だったわ

少し焦ったような表情で玄関に突入してきた安室さんの後ろで静かにドアが閉まり部屋は静寂に包まれた、あの、すいません、何か言って貰えませんか


「ま、」
「……ま?」
「マジカルピンキー」
「知ってるのかよ」


やべぇよほんとに何でよりによってこの人マジカルピンキー知ってるんだよそうだよ私がマジカルピンキーだよ!!

もう安室さん驚いてるのか呆れてるのかも分かんない表情だし変な汗かいてきちゃったよもうダメだ私の人生は終わった、近々米花町を出て違う街で暮らそう


「成程、それがなまえさんの趣味、という訳ですか」
「あの、安室さんすいませんこの事は他言無用で」
「ええ勿論」
「話の分かる人で良かった…!」
「ただし条件が」


直後安室さんの背後でガチャリと鍵の閉まる音が鳴った、あの鍵そんなに大層な音鳴る鍵だったかな……

ジリジリ近付いてくる彼から距離を置くように後退っていくといつの間にかソファーまで到達していたようで、躓きそのまま後ろに倒れ込んだ、目の前には安室さん、もう逃げ道は無い、正真正銘絶体絶命だ


「なまえさん」
「っ、あ、安室さん、ちょっと」
「バラされたくなければ僕のお願い、聞いてくれますね?」
「ひっ、わ、分かりました!分かった、けど、ち、近い」


あまりの近さに直視出来ず目を瞑ってしまったのがいけなかった、きっと今安室さんの顔は私の耳のすぐ近くにあるはずで、喋る度に息が耳にかかって擽ったいし多分私は今安室さんに押し倒されているような格好になっているんだろう、勘弁してください


「じゃあ次の日曜日、僕の代わりに探偵団の子達とキャラクターショーに行ってきて貰えますか」
「…………へ?」
「実は日曜日に仮面ヤイバーとマジカルピンキーのショーに連れていく事にされてしまったんですが、僕が行く訳にはいきませんし、部屋を見た限りなまえさんマジカルピンキーも仮面ヤイバーもお好きなようなので」
「な、なんだ、そんな事で良いなら」


びっくりした、あんまり色っぽい声で言うもんだから私てっきり


「何されると思ったんです?」
「や!え!べ!別に!やらしい事なんか何も考えてませんよ!?」
「ホォー、そういう事がお望みなら叶えて差し上げますが」
「違う違う!と言うかコスプレエッチなんてあんなの現実考えたら無理だし!」
「……成程、そこまで考えてたんですね、すいません僕とした事が」
「………………私今なんて言った?」
「コスプレエッ」


思わず安室さんの口を手で覆ってしまった

もう無理これ以上一緒に居ると墓穴を掘る所か墓石を建てられる、そもそもコスプレイヤーがウィッグ取ったらネット被ったハゲ頭にベタベタテープ貼ってあるしそんな良いものじゃないしな


「じゃあ日曜日よろしくお願いしますね、マジカルピンキー」
「一生引っ張るつもりだなこの人」



ミラクル☆ピンチ


(あの、そろそろ着替えたいんですが)
(どうぞ)
(いやあの、そうじゃなくて)
(脱がせましょうか?)
(早く出てけー!)


.

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