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□少しくらいの嘘ならば
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「ごめんね、幸村くん部活あるのに」
「気にしないで、今日はミーティングだけだから」
「そっか、それで話、なんだけど」


このタイミングでまさか彼女のほうから声をかけらると誰が予想しただろうか
平静を装っているが心臓が爆発してしまいそうなほど緊張している、冷静になれ精市


「私、幸村くんに迷惑かけてたみたいで、ごめんなさい」
「…ん?何の話かな」
「本当にごめんね、幸村くんの事困らせるつもり無かったし、でも別に苦手な訳じゃなくて、あの子しつこいから、そうでも言わないと諦めてくれないと思って」
「待ってみょうじさん、それ誰から聞いたのかな」
「私のせいで幸村くん落ち込んでるって、丸井くんが」


明日の相手はブン太に決定だ、うん、楽しみだな

しかし今のみょうじさんの話をよく聞けば苦手だと言うのは嘘らしい
あの時話していた子に何を聞かれていたのかは分からないけど、こうしてわざわざ俺に謝りに来るという事はきっと理由があるはず

この機に便乗するわけではないが、俺の気持ちを伝えるには絶好のチャンスだ
多分、今がその時なんだと、これを逃せばきっと言えなくなると思う


「確かに落ち込んでた、けど、今は平気」
「本当?無理してない?ごめんね、こんな事になるなら嘘つかなきゃ良かったな」
「でもみょうじさん、理由があって嘘ついたんだろ、なら仕方ないよ」
「確かにそうだけど、謝るくらいで済む話じゃないよね」
「なら一つお願いしたい事があるんだけど、聞いてくれるかな」
「私に出来る事なら、なんでも言って!」
「うん、ありがとう、じゃあ」


きっと彼女は自分の発言を後悔する事になるだろうけどこれはみょうじさんにしか出来ない頼み事

忙しなく動く心臓に、柄にもなく未だ緊張しているのを自覚した
だけどもう伝える言葉は決まっている


「俺の彼女になって欲しい」


言われた言葉を必死に理解しようとしているのか、見つめ合ったまま静止してしまった


「ダメ、かな」
「…えと、ダメ、じゃない、けど本当に私で良いの?」
「俺には好きな子に冗談で告白出来る勇気なんて無いよ、本気で言ってる」
「どうしよう、待ってね、どうしよう」
「みょうじさん…?」
「お詫びなのに私が嬉しくてどうするんだろうね、私、ずっと前から幸村くんの事、好きだったんだよ」


この笑顔が見られるなら、たまには悩むのも良いのかもしれないな



少しくらいの嘘ならば



(あ、幸村くん部活!)
(あぁ、大丈夫、そこにお迎えが来てるから)
(なんじゃバレとったか)
(俺ってば恋のキューピットだろぃ)
(明日の部活が楽しみだな)
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