tennis
□自覚した
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「さすがに許せないわ!浮気とか!」
「落ち着けよい、机壊れんだろ」
浮気を、されました、二度目です
ガツンと力一杯拳をぶつければ机に乗っていた丸井のイチゴオレが倒れそうになったけど流石の瞬発力で見事キャッチしていつもの天才的?をドヤ顔で言ってきた
なんだその顔腹立つな
「もう良い別れる」
「この前もそう言って結局別れなかったろ」
「だってさ、だってアイツもうしないって言ったんだよ、信じてあげなきゃ可哀想じゃん」
一度目の浮気は他校の子
買い物に行く約束をすっぽかされ仕方なく一人で出掛けたら髪を綺麗に巻いた化粧の濃い女と鼻の下を伸ばしてイチャイチャしながら歩いてた
後ろから蹴飛ばしてやろうかと思ったけど人が沢山いるショッピングモールだったから諦めて泣きながら家に帰った
「二度も浮気されるって事は私に問題があるのかな」
「なまえって彼氏の前だと猫被ってるだろ」
「丸井部活行かなくて良いのかよ」
「行こうと思ったのに人の事呼びつけたのはなまえだろい」
確かに丸井の言う通り、猫被ってたかもしれない
だけどそれは嫌われたくなくて、本当の私を知って幻滅されたら嫌だから、だから出来るだけ自分を殺してアイツのために尽くしてきた
だから浮気なんてされたのか、と今さら後悔しても遅くて、二度目の浮気現場に出くわした時はさすがに頭にきて、手に持ってた肉まんをぶつけてやった
「何だよー!私が悪いのかよー!」
「猫被ってるよりいつものなまえのほうが俺は良いと思う」
「何それどう言う事、と言うか丸井の好みとかどうでも良い」
机に頬杖をついて私の話を聞く丸井は何だか微妙な表情をしていて、何か言いたそうな眼で私を見ていた
「てか丸井友だちいっぱい居るでしょ、男紹介してよ」
「は、何で俺がそんな事しなきゃなんだよい」
「だって丸井の友だちイケメン多そうだし」
「……やだ、なまえ取られたらつまんねぇじゃん」
「なんだそれ」
正直、性懲りも無く二度も浮気したあんな男より丸井と付き合ったほうが楽しいだろうし気も使わなくて済むんじゃないかと馬鹿な事を考えた時期もあった
けど私は良くても丸井は仲良い女子いっぱい居るだろうし、そもそもかの有名なテニス部のレギュラーだし、方々から殺されそう
「じゃあさ、俺にしとけよ」
「ブフッ、何そのありきたりな慰め方」
「お前冗談だと思ってんだろ」
「……え、やだ冗談でしょ、やめてよ」
「俺、本気だから、じゃあまた明日な」
立ち上がるや、私の頭をポンポンと撫でて教室を後にした丸井の背中を、ただ睨むしか出来なかった
何だよ今の笑顔狡いだろ
……好きに、なっちゃうだろ
自覚した
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