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□放課後、夕立、それから
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「ひっ」
「うーん、これは酷いね」


突然の夕立、昇降口でマネージャーと二人揃って足止めを食らってしまった

この雨では傘なんて差しても意味はないだろう

おまけにゴロゴロと雷が鳴り響いて彼女は座り込んでしまった


「困ったな、どうしようか」
「…不二先輩、私を置いて先に行ってください」
「僕そんなに薄情な人間じゃないつもりなんだけど」
「だって、私動けま、ひぃっ!」
「じゃあ止むまでちょっと待ってようか」


なんだか漫画のようなセリフを言い始めたみょうじは大分雷が怖いようで耳を塞いで目を固く閉じている

そもそも僕がなまえを引き止めなければ今頃家に居るはずだった

タイミングが良いのか悪いのか、折角の今日がこんな天気になるなんて誰が思っただろうか

でもこれはこれで思い出になるのかな、付き合い始めた記念日が大雨だなんて


「早速なまえの苦手な物分かってなんか得した気分」
「えっ、なんですかそれ酷い!私こんなっわぁ!こん、こんなに、怖い思いっ、してるのにぃ…!」
「本当に苦手なんだね、雷」
「だって、空が光るなんて、ひぃっ!それに、音も大きくて、いつ自分にっ、落ちてくるか考えたら、怖く、きゃあ!」


今日一番の轟音が鳴り響き、胸に飛び込んできたなまえを思わず反射的にぎゅっと抱きしめた

どうしようかな、今日はまだそんなつもりじゃなかったんだけど

自分より頭一つ分も小さな彼女は腕の中にすっぽり収まって、なんと言うか、抱き心地が良い


「ね、なまえ、雷怖くなくなるおまじない教えてあげるよ」
「うぅ、なんですか…?」
「ちょっと顔あげて」
「っえ、んっ」


本当はおまじないなんて知らないけど

眼に浮かぶ涙が溢れてしまわないように、そっと触れるだけのキスをした


放課後、夕立、それから

(あれ、涙溢れちゃったね)
(不二先輩、あの)
(何、もう一回して欲しい?)
(…なんで分かっちゃうんですか)
(雷が止むまで何度でもしてあげるよ)

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