tennis

□怖いくらい、
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「おー、またやっとるわ」
「先輩ら、早う付き合うてもうたら良ぇのに」


ほんまに可愛いくないマネージャーやと思う、仕事は出来るのに


「謙也くん相変わらずおモテになるのね」
「なんや嫉妬か?」
「誰が彼氏でもない奴に嫉妬なんかするかよ」
「ほんまなまえちゃんは強がりやな〜」


仕事は出来る、顔も可愛い、性格も悪くは無いのに、それは俺以外の人間に対しての話で

部員からも慕われオサムちゃんからも信頼されていて、学校生活でも友だちは多いのに、俺に対してはつっけんどんやしすぐ喧嘩ふっかけてきよる

黙っとれば可愛えのに


「所でなまえ、聞いたで、好きなヤツ出来たんやろ」
「は?え、なんで謙也が知ってんのそれ」
「さー、なんでやろなー」
「ちょっ、おい、しらばっくれんな!誰から聞いたか教えろ!」


JKっちゅーんは恋バナが大好きな生き物で、休み時間にはどこからともなくあの子は誰が好きだとか、誰と誰がくっついたとか聞こえてくる

そんな腹の足しにもならんのに、良くまぁ毎日毎日話が尽きんなと関心する

そんでまぁ教室に居れば自然と耳に入ってくるもんで、あの男っ気の無いなまえに、好きな人が出来た、とか何とか


「止めとけ止めとけ、槍が降ったら困るやんか」
「うるさいバカ、放っとけ」
「まぁ告ったところでなまえが振られる方にたこ焼き賭けたるわ」
「余計なお世話だっつの、逆に奢ってやるから待ってなよ」
「おー、良く言う、期待せんと待っとるわ」


でも、たまーにムカつく事も有るけど、こうして冗談言い合えるこの距離感が、丁度良えのかもしれん

俺がなまえの事好きやなんて、誰にも言われへんもんな


* * *

「別にこれ位一人で運べるのに」
「遠慮すんなて」
「誰も頼んでない」
「なまえが寂しくて泣いたら敵わんから手伝ってやる言うてんのに」
「どうせなら白石が良かったな」
「お前なぁ」


古くなった大量のネットをごみ捨て場まで運ぼうとしてんのを偶然見付けたから手伝ってやる言うてんのに、この馬鹿女はマネージャーの仕事やからと一人でやる言いよった

ほんま可愛ないわ、なんやねん、俺にばっかり

もし声掛けたんが白石やったら、その例の好きなヤツやったら、素直にお願いしとったんやろ、どうせ

何で、俺の事も、頼ってくれへんねや


「あ」
「あ?あぁ、誰か居るな」
「………」
「なまえどない、…ははぁん、アイツか、好きなヤツて」
「うるさい、ちょっと黙って」


いつもの調子で文句を言い合いながら校舎裏のごみ捨て場近くまで行くと、なまえが何かに気付いたようで腕を引かれた

校舎の影から覗いて見れば、確かサッカー部のヤツと、同じクラスの子

もしかしてこれは、今から告白します言うんやないやろな

これはアカンやろ、なまえ俯いたまま動こうとせんし、もしこれがほんまに告白現場で、もしそれをアイツがOKしたら

案の定女子はサッカー部の男に好きやと、男のほうもよろしくとか何とか言うとるし、カップル誕生の瞬間に立ち会ってしもたやんか

こっちの事は向こうから見えへん場所やけど声は俺の耳にバッチリ聞こえていて、隣に居るなまえにもきっと聞こえとるはずで


「なまえ、大丈夫か?」
「……へへ、告ってもいないのに、フラれちゃった」
「お前泣いて」
「そりゃそうだよね、あの子のほうが可愛いし、私なんて」
「なまえは可愛え」
「……謙也?」


どうしていつも、強がるんや、今にも泣き出しそうな顔しとるくせに

俺はコイツの泣き顔なんか見たないし、あのサッカー部のヤツがなまえを泣かしたのも許せんし

俺がもっと早く、勇気出してたら、コイツの事泣かさんで済んだんやろか


「あんなヤツより、俺にしたら良ぇやんか」
「何、それどういう意味」
「俺はなまえが好き、せやから、なまえが俺を好きになるまで待っとるから、気が向いたらで良ぇから、その」
「……ふっ、ふふ、何それ、ふふっ」
「ちょっ、何を笑ってんねん俺は真面目に」
「ありがと、謙也」


やっぱりなまえは泣いてるより笑ってるほうが可愛い

と、そういえば俺らここに何しにしたんやろかと本来の用事を思い出した

サッカー部のアイツと女の子はいつの間にか居なくなっていて、俺が動くより先になまえがずっと手に持っていたネットをごみ捨て場に投げ捨てた


「はー、なんかスッキリした」
「たこ焼き、好きなだけ奢ったるで」
「謙也って本当馬鹿」
「はぁ!?お前に言われたないわ!」


何やねん、意味分からんわその笑顔、なんでいちいち可愛いねん

好きんなってもらうまで待たれへんやろ


怖いくらい、
君が好き


(本当はずっと謙也の事好きだったんだけどね)
(…………は?)
(よーし部活行こーっと)
(なん、はぁ!?今何て、おいちょっと待てなまえ!)

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