tennis

□そりゃまぁ男の子ですから
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レギュラー部員たちが居なくなると応援団もチア部の人たちも帰り支度をし始め、事の元凶である友人は私と目も合わせずそそくさと帰って行った

お前まじで週明け覚えてろよ

テニス部の部室を貸してもらい制服に着替え、部屋を出ると腕を組み超絶笑顔の幸村くんがお待ちあそばされておりましたすいません笑顔が怖い

半ば強引に引きずられるように幸村くんのお家へ連れてこられた私は今驚きの広さを誇る幸村くんのお部屋の床に座らされています現場からは以上です

なんだこの部屋は、広い、ただただ広い、沢山の本と私には誰の作品かも分からない絵画、表彰状やトロフィー、そして一人で寝るには大きすぎるベッド、私のベッドの二倍はあるんじゃないかな


「ハーブティー飲めるかな?」
「えっ、あ、はい!いただきます!」
「大分緊張してるね」


そりゃ緊張もするでしょうよ、生まれて初めて彼氏の家という所に来てるんだから

さっきとは打って変わっていつもの優しい顔に戻った幸村くんだけどなんとなく、どことなく怒りのオーラが滲み出ているような、なんだよ、チアの衣装似合わなかったって言いたいのかよ分かってるよ!どうせ寸胴だわ!


「なまえいつの間に応援団入ったの」
「あの、これにはちょっと理由が」
「来てるなら言ってくれれば良かったのに」
「……え、えーと」


怒ってるわけじゃ、無い?
いやそもそも私怒られるような事してないし!?なんで逆ギレしてんだ私!?


「なまえさ、どういうつもりであそこに居たのかな」
「どう、って、友だちにどうしてもチア部の人間が足りないからって頼まれたから」
「じゃあもしテニス部の応援じゃなかったらあそこに居なかった?」
「……ん、どうだろ、と言うか私本当は断ったんだよ、けどどうしてもって言われたから」


どうしたの幸村くん私には君の怒りポイントが分からないよ

普段から彼の部活や試合を見に行ったりはしないから不思議に思ったのかな、いや待て待て、私が男だったら彼女が部活の応援に来てくれるのなんて嬉しいぞ?え?なんで怒るの?

やっぱり私には男の子の考えなんて分からないよ


「先に言っておくけど、なまえが俺に黙って来てた事に怒ってるわけじゃないよ」
「あ、やっぱり怒ってたんだごめんなさい」
「あー、うん、怒ってるかな、うん」


怒ってんのかよ!なんだそれ!ごめんね!

でも普通なら、普通ならね、彼女が部活の応援に来てくれたら嬉しいもんじゃないの?私が男なら嬉しいけど


「正直に言うとね、なまえには来て欲しくなかった」
「……はえー、ごめんなさい」
「ごめん言葉が足りなかったね、えーと、ほら、あの衣装」
「衣装、あぁ、チアの…」


恥ずかしいから忘れてくれよ頼むから!

なんだか少しそわそわし始めた幸村くんはいったいさっきから何が言いたいんだろう、本当に分からない、元々何考えてるのか分かりにくい人だけどますます分からないぞ


「あの衣装さ、その、えーと…」
「な、何、はっきり言って!」
「いやでも、やっぱり」
「やっぱり、何、似合わないって」
「違う!似合ってた!あ、いや、……分かった、怒らないで聞いて」


似合ってたんかい!ありがとう!そして幸村くんほんとに挙動不審だね!

ひたすらに目を合わせようとせず、その目線は床とテーブルを行ったり来たりしていて、部活ではあんなに堂々としているのに今は見る影も無く

少しの沈黙の後、意を決したように顔を上げた幸村くんの口から飛び出た言葉を理解するのに少しばかり時間がかかった


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