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□既製品ですけど何か問題でも?
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「なまえ先輩!」
「……何その手」
「何って、今日なんの日か知らないんスか?」


いや知ってるよ、バレンタインだろ

吐き捨てるように言ってやると桃城はポカンと口を開けた


「桃にはあげないよ」
「えー!マネージャーから義理チョコ貰うもんじゃないの!?」
「逆に言うけどなんでマネージャーだからってあげなきゃいけないのかな」
「え、まじで無いンスか?」
「持ってないよ」


本当に持っていない、義理チョコなんぞと言うものは

と言うか去年も渡さなかったのになんで今年は貰えると思ったのかねこの人は

がっくりと肩を落とす桃城を他所にコートに向かうと外で不二くんがクスクスと笑っていた


「みょうじってば冷たいんだね」
「いや勝手に貰えると思ってる桃が悪いでしょ」
「それで、僕たちには無いんだ、本当に」
「……無いってば、アンタらには」


他の女の子たちとは比べ物にならないくらい女子力が無い私にはチョコを作るなどという考えは皆無で、本当に何も用意はしていない、ただ一つを除いて


「ちぃーす」
「なぁ越前!あの紙袋もしやチョコじゃねぇだろうな!?」
「勝手に見ないでくれません?」
「見たんじゃなくて見えたんだよ、なぁ、誰から?もしかしてなまえ先輩?」
「私はあげてないよ」


桃城は何をそんなにチョコに執着するのか

去年もこの日にチョコくれないのかとかしつこく言ってきたから何でか聞いたら義理でも女子から貰えれば嬉しいから、とかなんとか

桃城よ、そろそろ本命貰えるように頑張らなきゃ不味いんじゃないか…?


「なんだぁ、じゃあ良いか」
「桃先輩、そんなになまえ先輩からのチョコ欲しかったんスか」
「そりゃ欲しいに決まってんだろ青学のビーナスだぞ!」
「初めて聞いたんスけど」


私もそれは初耳だぞ

チョコレート、勿論有る、ロッカーの中に

だけどそれは流石に部室で渡すわけには行かなくて、しかも越前君しっかり他の女子からチョコ貰ってるし、いらないって言わないのは彼が優しいからなのは分かってるけど


「えー本当に持ってないの」
「だから、無いって、桃城には」
「……え?俺にはって事は他の誰かには有るって事?」


しまった!どうしてこういう時に限って頭が働くかね君は

その回転をもう少し勉強に生かしたらどうだい


「良いなぁなまえ先輩からチョコ貰える奴」
「桃先輩にはあげないっスよ」
「は?何だよそれどういう」
「なまえ先輩の本命、俺だし」


本当にどうしてくれようかこの生意気ルーキーは

自分が何を言われているのか理解出来ていない桃城はぱちくりと瞬きをするだけで、そりゃそうだよ、だって言ってないもんね、越前リョーマの彼女が例の青学のビーナスだなんて

音もなく現れた菊丸にぽんっ、と肩を叩かれた彼は見事に膝から崩れ落ちた


「だから桃先輩にはあげない」
「なんで言っちゃうのよ」
「だって、本当の事じゃん」
「お、おおお、おい!越前!嘘つくな!」
「嘘じゃないよ」


きっと証拠を見せないと信じないだろうからリョーマのほっぺにチュッとキスをして、帽子を奪って用具室へと足を向けた

桃とリョーマ(と言うか主に桃城)の言い争う声を背中で聞いて、白い帽子をキュッと被った


既製品ですけど何か問題でも?
(愛さえあればそれで良いじゃないか)


(ねぇ、チョコだけ?)
(他に何が欲しいの)
(言わなくても分かってよ)
(やーね越前くんったら、欲張り)


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