散歩ついでに世界の果てまで

□シュークリーム
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「「じゃんけん、ぽん!」」


テーブルの上にはシュークリームが二つ

今二人が出した手はどちらもチョキ

二つあるなら一つずつ食べれば良い、のだけど今回はそういう訳に行かないのである

なぜなら


「私苺が良い」
「この前プリンの時譲っただろ」
「それはそれ、これはこれ」
「名前さん歳上でしょ」
「こういう時ばっかり大人扱いする」


既に歳上とは思えない発言をしているけど俺だって苺クリームのシュークリームが食べたい

前回普通のプリンと抹茶味のプリンの時は名前さんの機嫌が良かったから抹茶味が俺の腹に収まったけど、今回はそういう訳には行かないらしい


「もう一回、じゃんけん」
「名前さんじゃんけん弱いのに」
「今日は勝てる気がする」
「何その自信、どこから来てるの」


この人は普段ボーッと小鳥とお話してるような人なのに案外頑固

一度やると決めたことはとことん納得するまでやり遂げるし、なかなか自分の意見を曲げることは無い、つまり今苺クリームのシュークリームが食べたい名前さんは何としても勝ち取ろうとしている


「じゃーんけん」
「「ぽん!」」
「やったー!私の勝ち!苺味!」
「え、えぇー、嘘だろ、名前さんがじゃんけん勝つなんて!」
「日頃の行いが良いからかな」


まさか、普段十回に一回くらいしかじゃんけんに勝たない名前さんが、五回のアイコの果てに勝つなんて

まぁシュークリームはまた買ってくれば良いだけなんだけど、普通のカスタードクリームも美味しいけど、この駅前のシュークリームは美味しいけど


「精市くん」
「ん?」
「どーぞ、苺味、半分こ」
「……どうしたの?」
「熱なんか無いよ!」


折角前から食べたがってた苺味を勝ち取ったのに、まさか名前さんが俺におすそ分けするだなんて

熱でもあるのかと思わずオデコに手を当てたけどいつもの体温


「やっぱりカスタードも食べたいから、そっち半分頂戴」
「名前さん嘘つくの下手くそだよね」
「何よー、早くしないと二つとも全部食べちゃうぞ」
「ふふ、分かったよ」


この人の考えが読めない時がある

けど確実に言えるのは名前さんは俺が好きで、俺も名前さんが好きだって事

今日のクリームはなんだかいつもより甘く感じた


(じゃんけんぽん)
(ほら負けた)
(何で!一発で負けた!)
(次は何を賭けて勝負しようか)
(今度は同じの二つ買おうよ)

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