散歩ついでに世界の果てまで

□台風
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「ただいま」

……あれ、デジャヴ

今日もお出迎え無しか、ちょっと寂しいな、とか言ってる場合じゃないアイスが溶けてしまう


「名前さん、居ないのー」


おかしいな、アイス買って帰ると連絡を入れたのに既読になってないし、お昼寝でもしてるのかな


「ゔぅ…」


……今何か、呻き声がしたような、寝室、かな?


「……名前さーん?居るの?」
「グスッ、……居る」
「え、えっ!?名前さん!?」


え、泣いてる?え、名前さんどうしたの何があったの

寝室のドアを開けるとベッドの上に蹲り、半泣きの名前さんの姿を見付けた

昨日はいつも以上にボーっとしてたし頭がモヤモヤすると言っていたけど、もしや風邪?


「名前さん、だ、大丈夫?」
「ン゛ンー…、ダメ、無理」
「どうしたの、泣かないで」


少し身体を起こして抱きしめると背中に回された小さな手がシャツを握ったけど、なんだかいつもより力が弱い

あ、もしかして、これは


「名前さんお薬飲んだ?」
「飲んだ、でも効かない」
「うーん、カモミールティー淹れようか」


昨日天気予報で台風が接近しているとキャスターのお兄さんが言っていた

名前さんは頭痛持ち、低気圧が来ると頭が痛くなるのだとか

本格的に痛くなってから飲んでも効果があるのかは分からないけど、カモミールティーが頭痛に効くらしい

お湯を沸かすために立ち上がろうとするも名前さんがしがみついているから動けない、困ったな


「名前さん、ちょっとだけ、すぐ戻ってくるから」
「グスッ、やだ、ここにいて」
「分かった分かった、よしよし」


これは本当にダメなパターンだ

抱きしめる力を少し強めて頭を撫でてやると、グズグズと子どものように泣き出す名前さん

少しくらい体調が悪くても我慢する人だから、こうなると本当に心配だ


「頭痛、替わってあげられたら良いんだけど、ごめんね」
「精市くん、ありがと、好き」
「知ってる、名前さん少し寝よう、後で起こしてあげるから」


コクリと頷いたのを確認してそっとベッドに寝かせると、今日初めて顔を見た事を思い出した

今朝は珍しく起きてこなかったけど、もしかして昨日からずっと頭痛かったのかな

あぁ、眉間に皺寄せて、見てる俺まで苦しくなりそうだ


「アイス、明日食べようね」


暫くすると規則的な寝息が聞こえてきた

名前さん、お願いだから我慢する癖直してね



(精市くん起きてー!シーツ洗うよー!)
(……昨日の名前さんは誰だったの)
(お掃除終わったらアイス食べよ)
(元気になって何よりです)


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