散歩ついでに世界の果てまで

□嫉妬
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参ったな、これは完全にお手上げだ

まさかこの人を本気で怒らせる日が来ると誰が思っただろう、いや俺自身予想もしなかった

春の穏やかな風のような性格の名前さんがここまで怒るなんて

対処法が分からない、何故なら今まで怒った所を見た事が無いから


「名前さん」
「………」
「ねぇこっち向いて」


ダメだ、これは何を言っても響かないヤツだ

しかし、ここまで名前さんの機嫌を損ねる事なんて身に覚えが無いし、見当もつかないな、どうしよう抱きしめてるクッションがぺしゃんこになりそうだよ名前さん


「名前さん、どうしたの」
「精市くん格好いいもんね、そりゃモテるよね」
「……え?」


え?な、何だ、何だ突然、怖いぞ


「名前さん、あの」
「精市くんモテるから別に買い物なんて私とじゃなくても良いんだね」
「何それ、どういう」
「私も精市くんと行きたかったなー、駅前のアクセサリー屋さん」


はて、確かに駅前のアクセサリー屋さんには行った、花屋のバイトが終わって、昼過ぎに

けどなんで名前さんがそんな事知ってるのか、さっきまで仕事してたのに

そう、名前さんが仕事を終わらせて帰ってきてからずっとこの調子で、ただいまの時から目を合わせてくれない

これはもしかして、もしかしなくても、ヤキモチと言うヤツ、かな、けど待って名前さん流石に面白過ぎるかな


「っふ、ふふ」
「……何よ、そんなに私が怒ってるの面白い訳?」
「いやいや、違う、ふふふっ」


成程、名前さんらしい、本当に可愛いなこの人は


「あのね名前さん、多分名前さんが見た俺と一緒に居た人、女の人じゃないよ」
「……で、でも、じゃああの美人さんは」
「あのね、あの人は」


あぁ、俺はなんて愛されているんだろう、そんな小さな勘違いで目に涙を浮かべる程怒られるなんて

しかし勘違いされるアイツも面白いな


「あの人は不二周助、中学の時からテニスしてた仲間だよ」


まぁ確かに、男の割には綺麗な顔してるかな、けど女性にしては背が高すぎるんじゃないかな、いやぁ面白い


「じゃあ私の勘違いだった、んだ、ごめん、精市くん」
「ふふ、良いよ、それだけ名前さんが俺の事好きだって事でしょ?」
「うん、好き」


今度は二人で行こうね、あのお店


(これ買うのに一緒に選んで貰ったんだ)
(……ネックレス?)
(名前さんいつも着けてるの壊れちゃっただろ)
(えぇー!可愛い!ありがとう!)
(可愛いのはどっちだか)


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