散歩ついでに世界の果てまで

□ハート
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スクールのバイトが無い日は名前さんに代わって夕飯の支度をする

今日は寒いからクリームシチュー、名前さんの好きな人参を沢山入れて

好きな食べ物は甘い物と人参、相変わらず可愛い


「ただいま」


噂をすれば愛しい声、だけど、なんだかちょっと違和感、何かあったかな


「おかえり、名前さん」
「……」
「名前さん?」


どうしたんだろう、玄関に立ち尽くしたまま動かない、お願いだから早くその顔を見せて


「名前さん、靴」
「精市くん、精市くん、私もうダメだ」
「っ、ど、どうしたの!?」


顔を上げるなり突然泣き出したかと思えば靴を脱ぎ捨て俺に突進してきた愛しい人、これはダメなやつだ、きっと彼女の胸の中は感情がいっぱいいっぱいで、その溢れたものがこの涙なんだ


「名前さん、どうしたの」
「ふっ、うう、もういや、いやだ」
「……おいで、シチュー出来てるよ、人参いっぱい入れたやつ」


涙を拭いながらこくりと頷いた名前さんの涙は止まらないまま、頭を撫でてやると頭に乗った手を握られた

温かくて小さな手、こんな小さな手で毎日どれ程の苦労を抱えているのか、きっと俺の知らない名前さんが頑張っているんだろうと考えると胸が締め付けられる


「はい、どうぞ」
「……いただきます」
「熱いから気を付けてね」


テーブルについて目と鼻を真っ赤にしながら、一口二口とシチューを口に運んでいた手がふと止まった


「名前さん」
「……っ美味しい、ありがとう精市くん」
「あー、また泣いてる、明日顔腫れちゃうよ」
「ねぇ精市くん、もう一回言って」
「……おかえり、名前さん」
「うん、ただいま」


やっぱり名前さんは笑ってるほうが可愛い


(あ、人参ハート型)
(残らず食べてね)
(ふふ、いっぱい入ってるね)
(俺からの愛だよ)
(ありがとー)
(凄い棒読み)


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