ふるーてぃーず

□おねいさん
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ももはたまにおねいさんだ。






今日は久しぶりに楽屋で全員が集まる日。
ももとは、テレビの収録が忙しいみたいでもう何日も会ってなかったから

いつもよりメイクも服も可愛くして、早足で楽屋に向かう。

かわいいねとか、行ってくれるかな。なんて妄想をしつつドアを開ける。
「おはよ。」
メンバーとの挨拶もそこそこに
入ってすぐにももを目で探すと、
そこには真剣な顔をして
さきと、次のライブのセトリなどを難しい顔をしながら話し合っているももがいた。

「ここなんだけどさ」

さきは仕事面では誰よりもももを信頼してる。

ももはそれを分かっているから
いつもより真面目な顔で、対応する。


いつも馬鹿みたいにぶりっ子だし子供っぽいのに

こんな時だけ大人になる。




邪魔、しちゃわるいかな。



「りさこおはよ、ってなにつったってんの?」
「へ?ううん、別に。おはよ、みや。」


なるべく平然を装い
みやの隣の椅子に座る。


たわいもない会話をしていると
何十分か経ってしまった。


仕事までまだ待機だし、
さきとももはまだ話し合いをしているみたいだった。



ふと頭の中で考える。


ももは仕事がんばってるのに、
おしゃれしてかわいいって言ってもらいたいとか、
久しぶりに会えて嬉しいってももも思ってくれてるのかなとか、



仕事より桃子のこと考えてたなんて

私だけなんか馬鹿丸出しじゃん。









そう考えると急に顔が熱くなってきて
みやにごめんとだけいって、楽屋を出る。


わざわざ遠い方のトイレまで走って、個室に入る。



どくどくとうるさい心臓の音を聞きながら、
息をゆっくり吸う。

走って出て行くなんて、不自然だったかも。


でも、我慢できない。


いつまでも、私ばっかり子供で


ももはもう、おねいさんで


私と会えることなんて気にもしてなかったんだろうか。



私だけ舞い上がっちゃって
馬鹿みたい。




ちょっとだけ泣きそうになって
慌ててハンカチで抑えようとしたら

ドタドタとこちらに走ってくる足音が聞こえたと思ったら

トイレのドアがガチャンと勢いよく開く。


「りーちゃん、いる!?」



「え?」




この甲高い声の主を、私は1人しか知らない。


「………もも?」

「よかった…みつけた。」



びっくりして涙も止まったが、
今は顔を見られたくなかった。


「お腹でも壊した?急にでてくから驚いちゃった。」

「…なんで…」


「ん?」


「なんで、来たの。」


やっとの事で声を絞り出す。



「来たかったから。」


「は?…意味、わかんない。」


「ももも分かんない」


うふふと笑い、余裕そうな声をしたももに少しむかつく。


少しの沈黙の後、
お腹壊してるからでてって。
そう言って追い払おうとしたら


「久しぶりに会えたのに、ももに話しかけてくんないんだもん。」


少し、トーンダウンしたももが喋りだした。


「トイレに行くなら、2人きりになれる絶好のチャンスじゃん?」



「え?」





「りーちゃんがね、おはよって入って来た時、ももねドキッとしてたんだよ。
久しぶりで、何話そうとか色々考えて」




「さきと仕事の話ししてたんじゃないの?」


「あれはあれ。りーちゃんが来たら終わろうと思ってたのに、
ももんとこじゃなくてみやのとこに座るんだもん。」


「だって、真剣に話してたじゃん!割って入るなんて無理だし。」


あまりに自分勝手なことをももが言い出すから、ちょっと怒った声で反論してしまった。


「わざとのばしたんだよ。」


…わざと?



「本当は、こんなに長くする話でもなかったんだけど、その、りーちゃん声かける前に座っちゃったし
ももがヤキモチ焼いちゃってむりやりさきちゃんを引き止めてたの」


そっか。




「馬鹿じゃないの。」

「馬鹿ってゆうほうが馬鹿なんですー!」




「「ふっ、ははは!」」


思わず2人で笑う。



イライラして、もやもやして
悩んだのが嘘みたいに吹き飛ぶ。




「なーんだ。」

「ん?」


ももはおねいさんだけど、






私とおんなじぐらい馬鹿なおねいさんだ。


カチャ、

個室のドアを開ける。

「やっと目があった。」
「もも、会いたかった。」




どちらからともなくハグをする。


そのまま少し体を離してキスをしようとすると

ニヤニヤしながら
「…あれ、りーちゃんお腹壊してたんじゃなかったっけ?なんでこんな遠いトイレまで走って行ったの?」


「…それは、その」




やっぱりももは一枚上手だ。

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