ふるーてぃーず

□やきもち
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今日は夕方まで仕事が休みになった。
突然マネージャーさんからメールで告げられたもんだから

せっかく朝早起きして服まで着替えたのに意味がなくなってしまった。


せっかく可愛い服を着てるし
そろそろ疲れた心に癒しが必要かな。



『今日、ちょっと会えない?』



できるだけ簡潔に、
どうしても会いたいという気持ちがばれないようにそっけないメールを送る。


ベットにダイブして、携帯を握り締めながら返事をまつと
思っていたより早く返事が返ってきた。


『もものお家行っていい?』



そ、そうきたか。



ゆっくりきてね、と返事を送ってから


急いで部屋を片付ける。


「ねーちゃん、うるさい!」


弟が苦情を言いにくるぐらいドタバタしながら掃除をする。

「あ、今日おねいちゃんの部屋来ないでね。友達来るから。」


弟は嘘だろという目で私を見る。

私はあんまり人を家に呼ばないからだ。

たった一文、もものお家にきたいといわれればすぐに招く

梨沙子はそれぐらい特別なのだ。


「できれば外に出かけて。ライブのチケットとってあげるから」


そういうと、目を輝かせて
私の部屋をでて、すぐに外へ出かけて行った。


少し高い出費だけど、今日はたしかママもパパも出かけるらしいし

これでりーちゃんと2人っきりになれる!



乙女チックシュミレーションをしながら、るんるんと掃除をする。







ピンポーン




ギリギリ片付いた所で家のチャイムが鳴る。


ドタドタと階段を降りて、
ドアを勢いよく開ける。

ガチャ



「いらっしゃい」
「…久しぶり。」


梨沙子は恥ずかしいのか、
目を合わせてくれない。


これ、と差し出されたのは
梨沙子らしいオシャレで高そうなケーキだった。



「わぁ、美味しそう!ありがとね。あ、お茶の準備するから部屋でまってて」



そういうと、ちょっと下を向きながら
うん。と返事をして
私の部屋へと向かって行った。




梨沙子が恥ずかしがるのも無理はない。


カントリーに就任してからというものいろいろ忙しくて


ここ数ヶ月ほとんどメールしかしてなかったから。



それに、家に来るのなんて何年ぶりだろう。




そんな事を考えながら
適当なジュースをコップに入れて
ケーキも皿にのせる。

とびきり可愛いお盆にのせて、
カチャカチャといわせながら
慎重に階段を登る。



「おまたせ。」
「…ありがとう。」



まだ恥ずかしさが残る中、
空気を変えるために無理やり話題をふる。

「私の部屋、案外綺麗でしょ?頑張って片付けたんだよ。」

そういうと
キョロキョロと部屋を見渡しだした。
無理やり押し込んだ本棚の本。
パソコンの前にバラバラに置いたアンケート用紙。



「うん。綺麗…だねギリギリ」
やっと少し笑った。


「いいの!私的には綺麗だから。
…それより、りーちゃんと話すの久しぶりだね。」

「もも、まだ仕事忙しいの?」

「だいぶ落ち着いたよ。なに?寂しかった?」


「ばかじゃないの。寂しくないし。」



と、いいつつ
毎日『おやすみ』とメールを送って来るくせに。


「私は、寂しかった。ごめんね、最近会えなくて。」


出来るだけ誠意が伝わるように
真剣に言ったのに


「そこは許してにゃんでしょ」

と茶化された。


それから
最近、こんなことしてたとか
しばらくたわいもない会話を繰り広げる。


が、一向に目が合わない。



ずっとジュースをいれたコップをみたり、
机の角をみたり、



はずかしいのー?といじると、怒って拗ねるだろうから
仕方ないかと気にしないように
おしゃべりを続けていると



ルルルル


梨沙子の携帯が震える。

ちょっとごめん、と部屋を出て行き

廊下で会話をしているようだ。


最初は気にならなかったけど
梨沙子の楽しそうな声が聞こえてきて

少しムッとして、ドアの前で聞き耳をたてると

梨沙子の携帯の音量が大きいのか
少しだけ相手の声が漏れて聞こえた。


…どうやら相手は女の子のようだ。

遊ぶ約束の話をしているみたいだけど、


何回も梨沙子がじゃあ、またといいかけているのに

話を無理やり続けてるみたい。



私と梨沙子の時間はあと何時間かしかないのに。
少しもやもやしながら
かれこれ、10分程待つ。


いい加減、我慢も限界にきてたけど

電話の相手はまだ話し続けていて
あろうことか
今日の夜食べに行こうなんてことまでいいだしたのだ。




もう我慢できない。




部屋のドアをバンッとあけて、
梨沙子の携帯を奪い取る。


「今デート中だからまた今度にしてね。あ、あと今夜は用事あって無理だから!」

と勝手に返事をしてピッと電源を切る。



ちょっと!って怒ってる梨沙子の手を引っ張って


ベットに押し倒す。
馬乗りになって、そのまま両手首を抑え込む。


「…なにしてんの。携帯返して」

相当怒っているのか、少し声が大きい。




うるさい口をむりやり唇で塞ぎ




「梨沙子はももだけ見てればいい。」



じっと目を見つめると、
やっと合わせてくれた。



「ももといるときぐらい独り占めさせてよ。」


怒りで声が震える。




するとりーちゃんはくすくすと笑いだした。


「もも、今自分のことももって言った。」


「それがなに。もも怒ってるんだけど」


「んーん。なんでもない。…許してニャン」




予想外の反応に呆気にとられる。


ちょっと冷静になって、自分がしでかしたことに顔が赤くなる。


とりあえずぎゅっと押さえつけていた手を離して、

「ごめん、どうかしてた。」


急いで
ベットから降りようとすると、

強く左手を引っ張られて
そのまま梨沙子の上にのしかかる形になってしまった。


「…しないの?」
「え?」




「私はももだけ見てればいいんでしょ?独り占め、しないの?」




年下のくせに、こんなのどこで覚えてきたんだ。


「するに決まってんじゃん」



今度は優しく、そして深くキスをする。







弟、追い出しておいてよかった。

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