ふるーてぃーず

□大好き
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ピロリン

メールの着信音が鳴る。


大した音ではなかったけど耳元に携帯を置いていたからか、
目が覚めてしまった。

こんな朝から誰?と少し不機嫌になりながら

起きてしまったんだから仕方ないと携帯をまだ開いていない目で睨み付けると、
メールの送り主は桃だった。

「え!?」

表示を見た途端に、びっくりして
ベットから飛び起きた。


『今から会えない?』


…うそ、やった。


最近ずっと会えてなかったから
嬉しくってすぐに返事を…と思ったけど


もも、仕事忙しそうだったし今日はあんまり動かない方がいいかな。

あ、でもお家によびつけるのもここまでくるの大変だろうし。


なんて色々考えた末、



『もものお家行っていい?』




と返事を返した。



『ゆっくりきてね』

とすぐに返ってきたものだから
笑ってしまった。

きっとももの事だから今から部屋を掃除してるんだろう。

できるだけゆっくり行かなくちゃ





踊り出しそうな気持ちを抑えて
とりあえず準備をする。



メイクをして、髪を巻いて、
洋服を決める。




そうだ、お土産になにか買って行かなきゃ。


「いってきます」



ウキウキしながら家を出て、
駅まで早足で向かう。




ももと久しぶりに会える。
嬉しすぎてにやけが止まらない。





どんな話をしよう、と考えているとふと頭に浮かぶ。



私って、今までももと何話してた?


久しぶりすぎて、会うの緊張してきてしまった。





私の考えとは裏腹に、足はどんどんもものお家まで進む。





ついにももの家までついてしまった。





深呼吸をしてから、インターホンを鳴らすと


ドタドタと音がしたかと思うとバンッとドアが開いた。



「いらっしゃい」




ひ、ひさしぶりと精一杯の声を出して

お土産のケーキで顔を隠す。




ももはケーキを見てありがとうと言いつつ

思い出したようにお茶を用意するから部屋でまっててと


さっさとキッチンへ向かってしまった。






き、緊張した。




ドキドキする胸を抑えて、階段を登る。



ももの部屋へ入ると、昔とあまり変わらない可愛らしい部屋だった。



所々、急いで片付けたのであろうものが押し込められていたりしていたけれど


それすら、可愛く感じてしまう。






「おまたせー」


ももが戻ってきた。





やっぱりどこか恥ずかしくて目を合わせられない。





私が黙っているとももが話題を振ってくれた。

「意外と綺麗でしょ、私の部屋。」


そう言われて、もう一度部屋を見渡すと


慌てて片付けた所だけ目に入ってしまって

思わず笑ってしまった。





そこから空気が和やかになって、
私も少しずつ話せるようになった頃に





ルルルル



と着信音が鳴る。


表示をみると友達の友達のようだ。

ももとずっと話していたいけど、
無視するのも悪いと思い


ごめん、とあやまって
少しだけ会話するつもりで、廊下に出て電話に出る。



「もしもし?」


『りさこちゃん、今度の日曜暇?』


「うん、多分空いてるよ。」


『じゃあ、遊ぼうよ!
私ずっと梨沙子ちゃんと2人で遊びたかったんだー』



「嬉しい、ありがとー。」



今、友達といるからあとで連絡するねといい、
電話を切ろうとしたら



『そういえばさ』


とどんどん新しい話題を振られる。
苦笑いしつつ、話を合わせて
切るタイミングを伺うけど



一向に話し終わる気配がない。



どうしようと考えてるうちに
十分ちょっと経ってしまった。



ごめん、忙しいからって切ろうとすると

じゃあ今晩食べに行こうよと言い出した。



それで、今静かになってくれるならといいよと言おうとしたとき

突然ももの部屋のドアがバンッと開く。
急に私の携帯を取り上げて

「ごめんね、今彼氏とデート中だからまたあとで掛け直すね。
あと、今日の夜は忙しいから無理。じゃあね」



と一方的にまくしたてて
電話を切ってしまって。


さすがに今の言い方だと、このあとなんて言い訳すればいいんだと

ちょっと!とももを批難しようとすると、


急にももに手を引っ張られ
すごい力でベットに押し倒される。



すごい真剣な顔で睨むものだから
少し怖くなった。


「なにしてんの、」


なんて強がってももに怒ると


私の手を押さえつけていたももの手が震える。

「梨沙子はももだけ見てればいい。」







ドキドキした。

急に梨沙子って呼び捨てにされて顔が赤くなるのが自分でもわかる。


桃と目があったとき、あまりにもももがかっこよくてまっすぐで。

いつもならりーちゃん顔真っ赤じゃん、とかすぐに
にやにやしながらいじってくるのに

今のももは私が真っ赤なのに気づいてないみたい。


震える声で
「ももといるときぐらい独り占めさせてよ」

と呟く。



そこで私は気がついて、笑ってしまった。



ももは豆鉄砲をくらった鳩みたいに目をまんまるさせて

驚いた顔をしていたけど、



私は笑いが止まらない。




だって「もも」って。

最近は自分のこと私っていってたのに。やっぱりあれはカッコつけだったんだ。



ちょっとしたことだけど、寂しいなって思ってた。桃も大人になっちゃったんだって。

それが
今は素の桃子だ。



私にやきもち焼いて、怒る私のかわいい桃子だ。




なにわらってんの、ってももはカンカンだけど

気づいてしまった私は
にやにやが止まらない。

しまいには柄にもなく
「許してにゃん」


なんて言ってみる。





桃は逆に私の態度を見て冷静になったのか呆れたのか

どうかしてたってあわてて離れようとする。



解放された手は少しジンジンしてたけど、構うことなくすぐにももを捕まえる。

勢いよくひっぱったから
また私の上にももが乗る形になった。



「…しないの?」



そういうとももが驚くように私を見つめる。


「私は桃だけ見てればいいんでしょ。独り占め、しないの?」



いつもももにやられているようにちょっと意地悪をすると



どうやら、桃のスイッチが入ったみたいだ。




いつものように妖艶に余裕たっぷりに微笑んで

「しないわけないじゃん」


とキスをされる。








やっぱりももはかっこいい。

そう思いながらももに抱きついた



大好き。もも。

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