禁断の書(NOVEL)

□ともに【170917 完結】
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なんでこんなことになったんだか。

そんな顔をしてイレブンが俺の隣を歩いている。
会話はほぼ無い。
当たり前か。
デルカダール王の命で地下通路を使い城へ潜入することになったがその瞬間イレブンの表情が曇ったのを見た。

以前俺が彼を崖に追い詰めたとき彼には連れがいた。
つまらない盗みで牢獄に繋がれていた盗賊の一人だ。
今にして思えばわけもわからず投獄された彼にとって唯一の仲間だったわけで。
あの表情から見てとても大切な仲間だったのだろう。
一緒にあの通路を逃げたわけだ。

大樹の崩壊後の事を彼の口からきいたことはない。
しかしあの時いた仲間は誰一人として彼のそばにいない。

「あ・・・イレブン?」
「何?・・・あ!」
何か会話をと名前を呼んだ瞬間。
ぼんやりとしていたわけではないが敵とエンカウントしてしまった。
「・・・しまった!」
先手に回られ、イレブンに痛恨の一撃を食らわされる。
「ぐっ・・・」
彼のHPが急速に下がり片膝をつく。
「ベホイミ!」
「ベホイム!」
俺と彼の回復魔法がほぼ同時に彼に発動された。
「ちっ!」
イレブンの舌打ちが聞こえた。
その隙に魔物がさらに攻撃魔法を仕掛けてくる。
イレブンは必殺技と会心の一撃を繰り出し無事に魔物をやっつけた。
「大丈夫か?イレブン」
声を掛けるが、汚れた服の泥を落としながらイレブンはちらりと冷ややかなまなざしで俺を見た。
「・・・回復呪文を唱えてくれるならもう1ターン早くやってもらえませんか?」
そして黙りこむ。
「・・・ああ、わかった。」
俺は頷いた。確かにあと1ターン早く唱えていれば彼は攻撃に廻れたのだ。

その後も結局会話は、なかった。
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