禁断の書(NOVEL)

□続・くじびき【171008 完結】
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シルビアがちょうどシャワー室から出て来て髪の毛を拭いているところにイレブンが入ったきた。
心なしか頬が赤らんでいる。

ふ〜ん

マルティナの指摘は図星だ。
崩壊後の旅で宿屋に泊まるときは必ずイレブンとグレイグは同じ部屋になる。
グレイグが何か細工をしているのにシルビアは気付いていた。
昔から少しだけそんなことが器用な男だった。

誰もいないから。
ちょっとからかっちゃえ!

「ねえ、イレブンちゃん?」
「何?シルビア」
「ついてるわよ…キスマーク」
シルビアは何もないイレブンの首筋にちょんっと指を当てた。
イレブンは意味が分からないという顔をして触れられた首筋に手を当てた。
「…ゴミついてますか?」
「そうじゃなくて、キスマーク!」
「どうしてオレの首筋にキスマークがつくんですか?」
「え?」
不思議そうな表情で首をかしげるイレブンをみてシルビアは、あら?っと口に手を当てた。
「もしかしてくじびきは本当に偶然?」
「…シルビアもグレイグと同じ部屋になりたいの?」
「そ、そうじゃないけど」
「みんなグレイグ好きなんだね。」
オレはどうでもいいけど。
服を脱ぎながらイレブンは一人ごちた。
「後でグレイグに言っておきます」
「いや、別に…」
じゃあ、とシャワーに続くドアを開けながらイレブンがそうそうと振り向いた。
「シルビア。ずるは本人が認めなきゃずるじゃないと思うよ。」
そうしてゆるりと笑うと指先で自分の唇をたどった。
「お休みなさい。シルビア」
パタンと扉が閉まる。
イレブンが見せた一瞬の艶かしい仕草にシルビアの鼓動はドキリと高鳴った。
「…ん?もしかして?」
うまくかわされたって事かしら。
グレイグが首筋にキスをしていないのが分かってたからあんな対応をしたって事?
経験不足の若者かと思ってたけどなかなかやるわねイレブンちゃん。
さすが勇者ってことかしら。

このシルビアともあろうものが見抜けないなんて。

「はあああ」
シルビアは大きくため息をつくとあらためて髪の毛を乾かし始めた。

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