小説
□切れ端の紙
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こんなことで悪いけれど
俺が残した過去の話をする。
まだ小さな頃のことだった。
俺が駅で一人で泣いている時に声を掛けてくれた兄さんの話。
悲しくて泣いていたのかな、嬉しくはなかったと思う。
母さんからはぐれてしまってそれはもう泣きながら途中からうずくまっていた。
「大丈夫か?」
「 」
驚いたことはなかった。
何の言葉を話しているのか分からなかったけれど心配しているのか、声を掛けられたことは分かった。
「名前は分かるか?」
「 」
何も分からなくてただ首を横に振る。
「喋れないのか」
「 」
今度は縦に振った。
「母親の名前は?」
...? 何の話をしているんだろう。
「...やれやれ」
「俺の家に行こう」
これは、一応普段喋らない訳にも入っている。
ただ思ったことはここにいる人たちはどういう人なんだろうと思った。