novel

□恥じらいよりも深く
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「あっ!」



という声とともに手を伸ばしたが
少しばかり遅かったようだ。





ベランダで洗濯物を干していると
突然の強風により飛ばされてしまった。






ここは5階、咄嗟にベランダの端に
手をついて下を覗いてみる。


(うわぁ...遠くまでいっちゃったかな)


ずっと遠くの方を探していたが
ふとマンションの下にある
ゴミ置き場の所にタオルらしきものが
何枚か落ちてるのが見えた。




ホッとし、急いで取りに行こうと
部屋の中に入った瞬間、




ピンポーン


とインターホンが鳴り響いた。





「誰だろ」

急いで通話ボタンを押した。


「はい!」






「隣の真島っちゅうモンやけど」




...?


...隣?


真島?




杏理の家は角部屋。



それに隣の家の住人は住んでるとは
聞いていたけど、なぜか家には
全然帰っていないようで
今まで一度も顔を合わせたことはなかった。




疑問に思いつつ、はい、と
もう一度返事をして玄関に向かい
ドアを少し開けた瞬間、


いきなり黒い大きな手が現れて
ドアが大きく開かれた。




現れたのは片目が隠れた長身の男。





「ひっ!」




「ひっ、って失礼なやっちゃなぁ」


と言い真島が片手を上げて見せてきた。




「これネェチャンのか?」



目に入ったそれは
先日友達と買い物に行った時
彼氏ができた時のためにと
しつこく勧められてしぶしぶ購入した
ブラとショーツだった。


杏理は必ず新しく買った下着など
身に付ける物は一度洗濯する。



杏理は洗濯したことを
生まれて初めて後悔した。



恥ずかしさと後悔で
言葉がでない杏理に
真島は追い打ちをかける。



「なんや、最近の女のコは
こないやらしいパンツはいとるんかいな」


ニヤニヤしながら手に持っているスケスケの下着を
ほぉ〜と言いながらこれでもかと眺めている。




杏理はハッとした。



「か、返してください!!!」



必死に腕を伸ばし下着を奪い取ろうとしたが
背の高い真島にかなうはずも無く
ヒョイとかわされ弄ばれる。



「そない冷たぁせんでもええやないか〜
ワシんちのベランダに落ってたの
拾ったったんやで?感謝くらいしてぇな〜」


「ベランダ...
それは、あ、ありがとうございます...」


真島はその言葉を聞くと、
ま、ええで、と言い下着を返した。



杏理は安心し、真島に頭を下げて
もう一度お礼を言うといそいそと
ドアを閉めようとした。







するといきなりガッという音と共に
ドアが止まった。




真島が足先でドアが閉まるのを止めたのだ。



杏理が慌てていると
真島はもう一度ドアを開けて
今度は玄関の中に入ってきた。



「!?、なにしてるんですか!?」




ドアがバタンと音を立てて閉まる。



「アホ。このまま、はいさいならて帰す思たんか?」

そう言うと杏理に近づき
壁に手をついて逃げられないようにする。



「隣に住んどるコがこないやらしいの
つけとるんか思たらたまらんわぁ」




杏理は顔を真っ赤にしながら
必死に抵抗する。


「ど、どいてください!警察呼びますよ!!」


真島の胸を押し返し、焦り口調で叫ぶが、
真島は気にもしていない様子で
俯いた杏理の顔を上げた。


二人の視線が絡み合う。



目は一つしか無いのにどうしてこうも
目を逸らすことができないのだろうか。




一向に目を逸らさない杏理に
不思議に思った真島は
杏理の内太ももを
人差し指でツーっとなぞった。


「ひゃっ...な、何するんですか!」



「ヒヒヒ、えらい可愛い顔で
見つめてくるから照れてもうたんや。」




やめてください!と強く押し返して睨む。



真島は楽しそうに耳元で
今度は先ほどよりも低く囁いた。



「なぁ、ワシ、もう我慢できんわ」




そう言うと、真島は
強引に唇を重ねた。















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