*DQ8 short dream*
□空中デート
3ページ/5ページ
「僕に掴まって」
『え、う、うん!』
戸惑いながらエイトの腰に手を回すと、光に包まれてふわりと空に舞い上がった。
神鳥の温かい光の翼が開く。
「しっかり掴まってね!」
エイトはそう言い、高度を上げる。
小さくなっていく街の光や、近くなる星空に名無しは目移りした。
『すごい…!』
「いつもは鳥の姿になるけど、神鳥に乗るっていうのも新鮮かも」
『そっか、普段はエイトが鳥になっちゃうんだもんね』
なんか面白いね、と笑って、ちらりとエイトの背中を見る。
名無しの腰に回した手にぎゅっと力が入った。
「怖い?」
『う、ううん!なんか、ドキドキしちゃって!いつも先頭にいるエイトがこんなに近くにいるなんて…って、私何言ってんだろ』
思った事がつい口に出て、焦って咄嗟に手を離すと、強風に煽られそうになる。
『きゃ!』
「名無し!」
エイトは振り返ると、片手を名無しの腰に回して抱き寄せた。
『ご、ごめんエイト!』
離れて体勢を整えようとするが、エイトは名無しを離そうとしなかった。それどころか、更にぎゅっと引き寄せられる。
細身に見えるのに力強い腕。すぐ近くに感じるエイトの呼吸。密着する体。優しい匂い。
「ごめん…もうちょっとこのまま」
そう言って首元に顔を埋められ、名無しの心拍数は更に上がってしまう。
どうしよう、こんな甘い空気…。
エイトが顔を上げると、至近距離で目が合ってしまった。
動けないでいると、エイトの親指がそっと名無しの唇をなぞる。
『……っ』
距離が、もっと縮まる。
もう後には引けなくなって、吸い込まれるようにエイトの口付けを受け入れた。
高鳴る鼓動と甘い感覚で、頭がふわふわしてくる。
そっと唇が離され、エイトにじっと見つめられる。
ふわりと風が吹いて、名無しははっとした。
『神鳥さまが見てる…』
でもどうか、この時間をもっと長く…。