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□愛・読書
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― 普通の夢主と普通のヴァーリ様の場合 ―
「貸して下さるんですか?」
差し出された本を受け取ってタイトルを口に出して読んだ。
私には少し難しい気がして、不安になって、ヴァーリ様を見る。
「もちろんだ。
……なんだったら、私が講義しようか」
その言葉の……ほんの少しの違い。
いつもの理路整然とした立て板に水じゃなくて、優しい、問いかけるような口調。
それが嬉しくて頷いた。
「はい、お願いします。
あ、お茶を淹れてきますね」
「ああ、頼む。龍姫。
今夜は楽しいひとときになりそうだ」
そう言って微笑むヴァーリ様。
たったそれだけのことで、胸が苦しくなる。
大好きで……大好きで……どうしたらいいか、わからなくなります、ヴァーリ様。
この想いをどうしたらいいのか……教えて下さいますか? ヴァーリ様。
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