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□MIGHTY BOYS-MIGHTY GIRLS
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「とにかく却下です。
物語に思い入れるのは悪いことではないが、ここは学園で、でぃすことやらを設置する理由がありません」
「うぬぅ……理由があればいいんじゃな?」
いきなり理事長が顔を上げた。
涙に濡れたジジイの目が爛々と光ったのを見てしまって、嫌な予感がする。
「よしっ! 来週は我が校の文化祭じゃ〜!」
待て、思い付きで学園行事を増やすな!
だいたい、来週だと!?
「1週間で準備が出来るかっ!」
いや、問題はそこじゃない。
だが私もあまりのことに動揺していた。
つい正論よりも即物的で説得力のある反対理由を持ち出してしまった……はず、だったが。
「なんじゃ?
普段の学びの成果をありのままに表現してこそじゃろう。
あらかじめ予定された日のために用意するもんなんぞ、一夜漬けの試験結果と同じじゃ!」
返されたのは逆に正論だった。
それ自体には文句のつけようが無い。
邪な欲から出た言葉でなければ、称賛に値する教育理念だ。
「……しかし、文化祭ででぃすこをやる必要は無いでしょう。
やりたがる学生がいるとも思えない」
そう上手くはいくか、と思った、が。
「大丈夫じゃ!
教育者として若き学生の手本になるよう、ワシ自らがでぃすこを出展する!」
そ、その手があったか。
しかも、教育者として学生の手本になるとまで言われては許可しないわけにいかない。
何の理由も無い思い付きであれば却下することも出来たが、正当な理由をつけて理論武装されれば理事長権限に対抗する術は無い。
「だが、授業やクラブ活動の成果を披露するなら教室でも体育館でも出来るが、でぃすことやらをどうやって作るつもりです?」
さっきグズグズと涙ながらに理事長が語っていたでぃすこは既存の学園施設を使って出来るものとは思えない。
それこそ1週間で間に合わせられるものでは無いはずだ。
「ふむ。
それは問題無い。
グリーズ先生の指導で技術科の学生に実習として作ってもらうつもりじゃ」
……そうだった。
グリーズ先生がいた。
ヴィーザルの母親で天才的な技術工芸の腕を持つ巨人族。
彼女が作ったものが理事長の派手好きな趣味に合うことは、ヴィーザルのブーツやトールのベルトを見れば一目瞭然だ。
もちろん技術科の実習ということになれば、材料調達もヴィーザルの所有する森から調達することだろう……技術科にはヴィーザルがいるからな。
詰んだ。
その瞬間、口実を失った私は潔く敗北を認めざるを得なかった。
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