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□神の加護を……
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「ところで、あれは、何だったんだ」



龍姫の髪から離されたヴァーリの唇が訝しげに疑問の言葉を呟いた。

ヴァーリの言う“あれ”を理解しようと龍姫がヴァーリの視線を追えば、それは、先ほど龍姫自身が一撃で薙ぎ倒した骸の山に向けられている。

確かに、と龍姫は思う。

あれは突然に現れた。

いや、突然現れたのは自分達ではないかとも思い至るけれど、それは今、問題ではない。

あらためて周囲を見回してみれば、所々に岩山が見える他は何も無い荒涼とした大地。

わずかな湿り気は帯びていても、その空気や空の高さは、そこがそれなりの高地であることを示す。

龍姫とヴァーリの他は命を失った褐色の骸だけ。

では、おそらく兵士であろうこの褐色の男達は何のために此処に居て何のために自分達を襲ったのか。

そう考えた時、小さな違和感を龍姫は感じた。



「あれ、は……。
動きが闇雲でただ前進しているように見えました。
まるで私のことも見えていないように」



そう。

龍姫を敵と認識して襲ってきたのならば、男達は龍姫を取り囲むように集まったはずだった。

たとえ統率の取れていない集団であったとしても、否、ならばなおのこと群がるように集まってきたに違いない。

けれど龍姫が思い出した集団の動き、その両端は進路を変えることなく間違いなく真っ直ぐに前進していた。

それは行く手に立ちふさがっていた龍姫が見えていなかったとしか思えない。



そうして龍姫は褐色の集団が向かってきた方向を見据える。

骸の山を越えて、既に静まった砂煙はもう、少しの風にのって舞い上がる砂埃でしかない。



だが、その遥か先に……それは近づいて来た。

枠を嵌め込んだ簡素な台座のような物。

四隅の棒には、薄い布切れがはためいている。

それもまた簡素ながらも一応は帳なのだろうと思い至ったのは、その薄布から独りの女が姿を現していたから。

もうひとりの女が大きな葉のような物を傘のように差し掛ける。

それだけならば、どこかの姫君とお付きの召使いの風情。

でも、彼女達は襲ってきた男達と同じ褐色の肌をしていた。

男達の後方に居て、そして何があったのかと心配するように駆け寄ってくる。

囚われの身ならばこれを幸いに逃げ出しているはず。

ならば、この女は……。

龍姫の手が再度、大鎌を握り締めた。


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