short2

□25:00の嵐
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雲ひとつ無い夜空に白い月が浮かぶ。

草原を見渡す丘の上。

眩い光の降り注ぐこのイザヴェルの地を見下ろす。



私は護りたかった。

この地を。

この手で。



それは嘘じゃない。

今でも変わらない。



ただ、その理由が……。



神々や世界を救うだとか。

ナビィに頼まれたからだとか。



そんな正義感や純粋な信頼からくるものでないことに今更やましさを感じてしまうだけで。



もう、私は……。



ヴァーリ様のためにしか在れない。



ヴァーリ様のために。

ヴァーリ様を護るために。

ヴァーリ様の座すこの地を護るために。

ヴァーリ様につながるすべてのものだけを護るために。



もう、私は、ヴァーリ様のためにしか生きられない。



そんなことが許されるのかと何度も自問自答してみる。

ここに居るのは、恋という感情に囚われ溺れるただの女にすぎない。

なのに、答は、行き着いてしまう。

たとえどんなにやましくても浅ましくても汚くても利己的であろうとも、私は私の力をこの世界で行使する……愛するヴァーリ様のために、と。







少し冷たい風のなかで月光を浴びて浮かび上がるイザヴェルの地を無言で見つめる。

その私の背中がふいにあたたかくなる。



「……!?」



振り返ることも出来なかったけれど。

肩越しに胸元にまわされた腕を見れば、私の後ろに誰が居るかわかってしまう。



「……ヴァーリ様」



怖くて。

それ以上言葉に出来なかった。

今の私の顔を見られたら。

今の私の心を見透かされたら。

きっと、ヴァーリ様に失望されてしまう。

そんなのは、嫌。

でも、きっと。

ヴァーリ様に解らない訳が無い。

どんなに私が愚かな者かなど……ヴァーリ様が解っていない訳が無い。



溜め息が聞こえた。

溜め息……それはきっと断罪の鎌。



やっぱり。

とうに見透かされていた。

もう失望されてしまっていた。



怖い。

全身が凍りつくように痛い。

心が、悲鳴を、あげる。



この腕が緩み、離れていったら。

私は、ヴァーリ様に捨てられてしまう。



「……君は」



降ってきた深い溜め息。



「君は考えすぎだと何度言ったらわかる?」



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