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□悪女
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関わりかたが変わってきたと私自身思っていた。
親父への反抗のために。
私自身の立ち位置のために。
それでも、今はこうして、それまで避けていた神々の宴に欠かすことなく……一応は……顔を出すようには。
そう。
変わってきたと。
「今夜は戻れないかもしれない。
君はどうする?」
館の扉を閉めながら問いかければ、龍姫は珍しく声を上げて、「うふふ」と笑った。
「ナビィと一緒に女子会をします。
エレシュキガル様やマーリン様や、ああ、最近ペレ様にお会いしてないからお声をかけるのもいいかもしれない……」
唇に指を当てて考えている龍姫。
だが。
その唇から飛び出してきた女神の名前に、私は眉間に皺が寄るのを止められなかった。
揃いも揃って男神でさえこそこそ逃げ出すような逞しい女神だ……精神的な意味で。
まあ、龍姫の女子会の範疇には、モンチュやワイナミョイネンという肉体的にも逞しい神も含まれるのだが……待て? あいつらは女神ではないな。
思考に気を取られていたら、龍姫はいつの間にか空を見上げていた。
「月……綺麗ですね」
つられて見上げた夜空。
月は冴え冴えとして自分の心を覗き込んでいるような気分にさせる。
龍姫はよく私を月のようだと言うが、何を思っているやら、可笑しな奴だ。
心の中で苦笑する……と。
ふと。
違和感に気付いた。
感じた違和感は、下ろしていた腕。
龍姫が私の袖口をそっと握っている。
「どうした」
「えっ……あっ! な、何でもないんです!」
何でもないと言うには、龍姫らしくない慌てようだが。
「あ、あの! 宴のお時間に遅れてしまいます」
言われてみれば、そろそろ時間だ。
龍姫の様子は気になるがナビィや女神達と女子会があるのなら引き留めてもマズいだろう。
「送っていけないが、大丈夫か?」
口に出してみれば我ながら筋の通らない問い掛けだと思ったが、大丈夫か? と心から疑問形になるのは止められなかった。
「大丈夫です。
ヴァーリ様も行ってらっしゃいませ」
何事も無かったようにいつもの表情に戻る龍姫に、私もそれ以上かけるべき言葉が見つけられずに、歩き出した。
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